劇場公開日 2015年9月5日

  • 予告編を見る

「記憶と感情、人が人である為に」ギヴァー 記憶を注ぐ者 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0記憶と感情、人が人である為に

2020年11月28日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

興奮

知的

荒廃した後世界は徹底管理され、差異も犯罪も貧困も無い“理想郷(ユートピア)”に。
そう、ここはお馴染みYA小説映画化の世界。

『ハンガー・ゲーム』『ダイバージェント』など定番だったら、革命児が居て、現体制に反旗を翻して闘うアクション的な作品(+三角関係ラブロマンス)が多いが、本作はSFドラマといった趣向。

全てを司る主席長老から、“レシーヴァー(=記憶を受け継ぐ者)”の大任を言い渡された青年ジョナス。
“ギヴァー(=記憶を注ぐ者)”である一人の老人を訪ねる…。

このユートピアでは誰もが平和に暮らしているが、投薬によって感情も抑圧され、記憶すら持っていない。ただ一人を除いて…。
その一人というのが、ギヴァーの老人。
選ばれたレシーヴァーは、ギヴァーから感情や記憶を受け継ぐ。

感情を知らなかった人が初めて知る、人としての幸せ。
何て素晴らしいものなのだろう。
何故こんなに素晴らしいものを抑圧したのだろう。
美しい自然、世界、人間関係、愛…。
次第に疑問に感じ始める。
また、それまで白黒だったが、ジョナスが感情や記憶を受け継ぐにつれ、カラーになっていくのもユニークな見せ方。
しかしそれは、時には試練にもなる。

人の感情や記憶は幸せだけではない。
痛み、悲しみ、苦しみも伴う。
今を生きる我々でさえそれらに心折れそうになる時あるというのに、未来の感情や記憶を知らぬ青年だったら…?
何故人間が感情を抑圧し記憶も消したのか納得してしまうだろう。
でも、誰かが記憶を注ぎ、誰かが記憶を受け継いでいかなければならない。
一人でも。幸せの記憶だけではなく、痛み、悲しみ、苦しみの記憶も。
人が人である為に。

ドラマタッチだが、中盤辺りから現体制に疑問を抱き始めたジョナスの監視&逃走サスペンスも。
やはりYA小説の映画化作品では『ハンガー・ゲーム』がご贔屓だが、『ダイバージェント』他よりかはテーマ的にも悪くはなく、地味ではあるが、思ってたよりなかなか。
だけど一番の特筆は、この手の作品にメリル・ストリープやジェフ・ブリッジスが出ている事!

近大