劇場公開日 2014年7月12日

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南風 : インタビュー

2014年7月10日更新
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黒川芽以、恋に仕事に悩む女性を演じた日台合作「南風」への愛を語る

日本からわずか3時間の距離で、異国情緒あふれる世界が広がる台湾。観光地として高い人気を誇る同所を舞台に、恋愛と仕事に敗れた女性が成長する姿をフレッシュに描いた日台合作「南風(なんぷう)」が完成した。主演女優は、ジャンルを問わずにキャリアを重ねてきた実力派女優・黒川芽以。「ひとつのイメージにとらわれずに、どんどん変化できる女優でありたい。それが見ている人へのサプライズだと思うし、面白いと感じてもらいたいんです」。そう笑顔をのぞかせる黒川は、初となる海外撮影に挑んだサイクリングムービーを通じ、何を感じたのか。(取材・文・写真/編集部)

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神童」の萩生田宏治監督が、「コドモのコドモ」以来約6年ぶりにメガホンをとったロードムービー。若いモデルに恋人を奪われ、仕事でも異動を命じられた26歳の雑誌編集者・藍子が、サイクリング記事取材のため、訪れた台北で、ガイドを買って出た少女トントン(テレサ・チー)、青年ユウ(コウ・ガ)とぶつかりながらも心を通わせていく。

「見終わってまず、『ロードムービーっていいな』と思いました。自分も旅をしている気分になるし、台湾の良さや素敵な場所を知ってもらえるんじゃないかな」。九フン、淡水、日月譚をはじめとした台湾の観光名所や、広島と愛媛を結ぶサイクリングロード「しまなみ海道」が映し出され、実際に足を運んだかのような臨場感あふれる美景を味わうことができる。「もともと乗り物が好きで車も乗るのですが、自転車で遠出したくなりますね」。黒川は撮影を通じていくつものスポットをめぐり、自らクロスバイクを購入するほどサイクリングに魅了された。

本作は、「サイクリング」「台湾」というテーマに加え、人生の岐路に立ち悩む20代後半の女性の姿を浮き彫りにしている。「私は藍子を演じることに集中していました。20代後半の女の子って、いろいろな悩みがあると思うんです。自分自身が20代後半ということもあり、サイクリング、台湾とともに女性の感情が3つ目の柱としてありました」。萩生田監督と話し合いを重ね、20代後半の女性のリアルな感情をすくいとっていった。

「頑張ろうとしているけれどたまにガクッときちゃうところが、1番リアルだと思うんです。毎日落ち込んでいたり、ずっと立ち上がれないわけではないけれど、たまに引っぱられてしまうことがある。なにかを思い出したり、あるひと言で傷ついて落ち込んだりすることがある。そこをきちんと表現したいと思ったんです」。恋愛、仕事と誰もが直面する困難を抱えた女性像を、等身大のキャラクターとして演じ「楽しい旅のなかでリフレッシュするということだけではなく、旅の途中での感情の揺れを表現したいと思っていました。だから、台湾の空気や役者さんたちも藍子をつくってくれたんです。芝居はひとりでするものではないし、その場所の空気を感じてやりたいんです」

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藍子と同じく、台湾は初訪問となったが「テレサちゃんとコウさんが、映画みたいに台湾語でしゃべっているのを後ろから見ているという状況があって。なんとかコミュニケーションを取ろうと、片言の英語とジェスチャーで切り込むということを常に現場でやっていました。藍子が置かれた状況と一緒だったので、その感じをそのまま出せばいいと思ったんです。すべてが大変だったけれど、ふたりと頑張ってコミュニケーションを取ろうとしている時や、ひとりで夜の台湾をぼんやり歩いている時に、藍子を感じることができて本当に良かった。ユウが壊れた自転車を修理する場面は、私の顔がものすごく疲れているんですが(笑)、つくっているものではないので、すごくリアルで本当に旅をしたんだという気持ちでいっぱいです」

藍子は、苦境に立たされ、初めての土地に戸惑いながらも、自らの道を切り開いていく。言語面など実体験での苦労も踏まえて挑んだ役どころは、「最近の役では1番似ています」。そして、「キャラクター設定ってすごく難しい。例えば『明るく素直』といってしまえば簡単だけれど、人間はひとつの感情だけじゃないですよね。もっと複雑に入り組んでいて、同じ感情でも深みが増すことによってミルフィーユのような層ができて、ちょっとずつ違いが出ると思うんです。だから、『こういうキャラクターだ』というものを決めずに、感情の起伏のバランスを大切にしています」と持論を展開した。

台湾での撮影は約2週間に及び、台北から九フン、基隆港、淡水、台中、龍騰断橋跡など多くの名所をめぐった。「台湾の人は日本人を歓迎してくれていて、すごく優しい。プライベートでも海外に行きますが、1番優しかったんじゃないかな」と振り返り、「九フンが1番写真を撮った場所かもしれない。もともと写真が好きなので、映画で藍子が使っているカメラは自分のカメラなんです」とニッコリ。日本での撮影も充実していたようで、「しまなみ街道もすごくキレイきれいだったな。本当にすごくて、自転車で走っている主観の映像を見せたいくらいです!」と声を弾ませた。

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黒川の「南風」への愛はあふれんばかりだ。「自分のなかですごく思い入れが強くて。大変であればあるほど、思い入れが強くなると思うし、単純にこの映画がすごく好きなんです。今までやったことがないジャンルだったんですよね、ロードムービーって」。新たなステップに踏み出した本作を経て、「海外での撮影はすごく刺激的で面白かった。時間が経って気付かないと『ここが成長した』と言葉で言うことはできないけれど、すごく刺激になると思うんです。常に刺激や影響を受けていた方が芝居に深みが出ると思うので、チャンスがあればまた海外で撮影したいです。刺激を受けて価値観を変えるには、年を重ねると旅をしないと難しいんじゃないかな。そういう意味で、ロードムービーは刺激的なのかもしれないですね」

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