劇場公開日 2015年4月18日

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「全ては波打ち際で見た一瞬の夢のように」インヒアレント・ヴァイス ぐうたらさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0全ては波打ち際で見た一瞬の夢のように

2017年7月25日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

難しい

過去にも幾つかのトマス・ピンチョン作品を映画化しようと試行錯誤してきたポール・トーマス・アンダーソン監督。そのいずれも断念したところ、急遽売りに出されたのが本作の映画化権だったという。PTAがこれに飛びついたのは当然としても、映像不可能と言われるピンチョン作品をよくぞこれほどの内容へ築き上げたものだと感心させられる。
魅力的なキャラクター達が不気味にうごめき、幻想的な靄の向こうには「黄金の牙」がそびえ立つ。ジョシュ・ブローリンの理不尽な暴力に耐えながら、美貌の彼女の肢体に酔いしれながら、私達にできることといえば、ここで這いつくばって犯人探しをするでもなく、ただただ謎を深めていく筋書きに身を委ねるのみ。全ては波打ち際で見た束の間の夢のように、あるいは指の隙間からこぼれる砂のように儚い。観る者を選ぶ映画ではあるが、観るたびに陶酔が増していく。これは後からジワジワと浸食が進んで行く危険な映画だ。

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牛津厚信