劇場公開日 2013年12月21日

「中村屋、日本一!」映画 中村勘三郎 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0中村屋、日本一!

2016年2月8日
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鑑賞方法:DVD/BD

泣ける

2012年に亡くなった歌舞伎役者、中村勘三郎に10年密着したドキュメンタリー。

正直、歌舞伎は一度も見た事が無い。
歌舞伎の世界には疎く、どうも取っ付き難い。
中村勘三郎の名は勿論知っており、「やじきた道中 てれすこ」「ディア・ドクター」など映画でも何度か顔は拝見したが、それは歌舞伎の名役者であるという肩書きをただ頭の片隅に留めているだけに過ぎない。
だから本作で、初めて中村勘三郎という人物を真っ正面から見た気がする。
そんなド素人でも見応えある作品だった。

まず、ベタな感想だが、中村勘三郎の歌舞伎を生で見てみたかったと素直に思った。
そう思っただけでも本作を見た甲斐があった。
インタビューの中で、自身を貪欲と言っていた。
貪欲で、チャレンジャーだった。
歌舞伎の海外公演。
歌舞伎を外国語で披露する。
それは本当に歌舞伎か?…そう思わずにいられないのも無理はない。
歌舞伎は日本の伝統。
が、勘三郎は敢えて挑戦する。
日本の伝統の面白さと魅力を世界の人に伝える為に。
何も歌舞伎そのものをひっくり返す訳ではないのだ。
ちょっと趣向を凝らすだけ。
何事も吸収し、視野を広くする。
ジャンルは全く別だが、前に何かで、もし円谷英二が今生きていたら積極的に最新技術を使っていただろう、というのを読んだ事がある。
それをふと思い出した。
縛られない自由な発想、視野、挑戦、貪欲…それらが新しい成功を導く。

地位と名声を築いても、絶えず稽古に精進。
癌が発覚しても、再び舞台に上がる事を諦めない。
弟子たちへの厳しい指導、叱責、眼差し…。
もはや情熱を通り越して、執念。
歌舞伎馬鹿一代とでも言うべきか。

父亡き後の息子たちの決意の言葉にはグッとくるものがあった。
四十九日、孫は祖父の映像を見て真似事をする。
中村スピリッツは受け継がれている。

近大