劇場公開日 2014年6月28日

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奴隷区 僕と23人の奴隷 : インタビュー

2014年6月27日更新
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秋元才加&本郷奏多、役者としての戦略と覚悟

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勝負は何でもアリ。勝てば主人、負ければ奴隷。現実味のない話にも聞こえるが、「奴隷区 僕と23人の奴隷」で描かれるサバイバルバトルは、実社会に共通する何かを秘めているのかもしれない。小説・漫画投稿コミュニティ「E★エブリスタ」で連載された原作「奴隷区」が若者を中心に人気を集め、1660万ダウンロードを記録したという事実がそのことを裏付ける。そんな本作に“参戦”した秋元才加と本郷奏多も、役者としてさまざまな思いを巡らせて戦いに挑んでいた。(取材・文・写真/山崎佐保子)

秋元と本郷が演じたのは、退屈な日々から脱却しようと禁断の奴隷ゲームに身を投じていく姉・荒川エイアと、弟・大田ユウガ。2人は親の都合によって長らく離れて暮らしていたが、ユウガが「SCM(スレイブ・コントロール・メソッド)」という謎の器具を手に入れたことで、命がけのサバイバルゲームに巻き込まれていく。

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昨年8月にアイドルグループ「AKB48」を卒業した秋元にとって、本作は卒業後初となる主演映画。実写化作品が初めてだったという秋元は、「実写化って“写す”ってことだから、原作を完璧にコピーすることだと最初は思っていたんです。なので今回勉強になったのは、実写化にもたくさんやり方があるってこと。原作にインスパイアされて膨らませる作品もあれば、原作のビジュアルをなるべく忠実に再現するやり方もある。どれが正解っていうのは難しいので、原作を活かしつつ映画で新たな『奴隷区』を作ることを目指しました。最終的に、『荒川エイア、秋元でよかったんじゃない?』って思ってもらえれば、今回は合格点だなって思います」。

一方、「NANA2」や「GANTZ」シリーズなど原作モノへの出演経験が豊富な本郷。各作品で原作の世界観を緻密に体現してきたが、「本を読んだだけでは想像できない部分がたくさんあったので、かなり難しい作品だとは思いました。でも、文章として書かれていることにそれほどインパクトがなくても、映像として描いたらインパクトの大きいものになる可能性がある物語なんじゃないかなと思いました」と映像ならではの表現を模索。「『NANA』や『GANTZ』などはビジュアルが忠実でなければ成立しない世界観。今回はそれとはちょっと違うので、そんなに強く意識したことはなかったかも。原作は23人のストーリーでそれぞれのキャラクターに均等にスポットが当たる形なので、映画化する場合には主人公を作るのは必然。なので他のキャラクターがやっていることも僕たちがやっていたり。原作通りにきっちり表現するというよりは、勝負のルールや設定が『奴隷区』の面白いところなので、そこさえきちっと抑えておけば問題ないかなって思っていました」とするどく分析していた。

“奴隷”という言葉はちょっと乱暴かもしれないが、人間には支配欲、あるいは支配されたい願望、到底言葉にはできないようなさまざまな“欲”を抱えて生きている。秋元は、「みんな隠しているだけで、それって実は普通のことですよね(笑)。この映画も、人間の中の欲望をデフォルメしただけのこと。見ると『自分にはどんな欲があるだろう?』って考えるきっかけになるかも。毎日ダラダラと過ごすことは簡単にできるけど、ちょっとリスクをおかして踏み込んだ時の“ドキドキ”には生きてるって感じがある。この映画のキャラクターたちはSCMという間違った方向にいくけど、刺激って自ら作り出していかないといけないものであるのは確か。人生を華やかにする刺激は、やっぱり自分で見つけなきゃって思います」。本郷も、「この映画のキャラクターたちは、みんな本能のまま清々しく生きてますよね。惰性で生きるよりリスクを負って勝負するってかっこいいし、見ていて気持ちもいい。だけど、自分だったら絶対に勝てる方法がなかったら勝負しないな(笑)」と冷静だった。

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予告編に収められた秋元が床をなめるシーンが一部メディアで話題を集めたが、秋元自身はその現象に驚いているという。「客観的な印象って自分では分からないもの。床をなめるシーンは、ただ床をなめていればよかったので私の中では簡単なシーン(笑)。そういう芝居よりは、ユウガとの関係性の表現の方がチャレンジだった。原作とは設定が違うし、あやうい姉弟愛みたいな屈折した恋愛観を表現しないといけなかった。物語の展開も早いので、心情は限られたところでしか表現できない。本郷君と相談しながら、2人の微妙な距離感を作り上げていきました」と心理描写に心を砕いたという。

挑発的で少々エキセントリックな弟ユウガに対し、曲がったことが嫌いな姉御肌エイアは、秋元のパブリックイメージと重なる。しかし、「興味ないことには興味ない、イヤなことはイヤという部分は似てるかもしれない」と共通点はありながら、「私はよく『すごい熱い人だね』って言われるけど、自分では自分のことをどこか冷めた人だと思ってるんです。だから今回も『熱さが全面に出てましたね!』って言われると、『くっそー!』って感じ(笑)。それは自分の中の課題だと思っています」と新しい“秋元像”に挑んでいる。

対する本郷も、クールでミステリアスな役柄を数多く演じてきたせか、孤高なユウガのイメージにぴったりな印象を受ける。「そういった偏りが起きるってこと、同じような役柄で声をかけていただけるということは、今までやってきたことが成功して認められたってことでもあるのでうれしいこと。もっと極めていけたらいいのかなと思います」と冷静に受け止めていた。しかし、「なぜかいただくほとんどの役で両親がそろっていないし、必ず頭は良い。真逆にすっごく幸せなバカとかやったら楽しいかもしれない(笑)」と秘めた願望を明かしながら、「今はいただいた役を全力でやるだけです」とストイックだった。

「AKB48」卒業後、女優としての秋元の活動に注目が集まるが、「今はいただいた役を一生懸命やりたい。ビジュアルのせいか気の強い役が多いけれど、実際の私はボケーっとしてることが多いので、気の抜けた演技ができる作品に出会えたらうれしいな(笑)。そしたら、自分の中でも何かが変わっていくような気がするんです」。

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