マンガ肉と僕 インタビュー: 杉野希妃が探求する、女性としての生き方と映画製作という“宇宙”

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マンガ肉と僕

劇場公開日 2016年2月13日
2016年2月9日更新
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杉野希妃が探求する、女性としての生き方と映画製作という“宇宙”

マンガ肉と僕」。男性的な響きの題名をもつ本作は、プロデューサー兼女優として、国境を越えボーダレスな活動を展開している杉野希妃の初監督作であり、「男に抗う女たち」の映画だ。ひとつの枠にはまることなく、見る者の思考を刺激する映画を創造してきた杉野監督が、2月13日に劇場公開される本作で模索した女性としての生き方、そして映画製作への強い思いを映画.comに語った。(取材・文/編集部、写真/山川哲矢)

2012年のプロデュース&主演作「おだやかな日常」で、第5回沖縄国際映画祭の最優秀ニュークリエイター賞と女優賞を受賞したことが、監督デビューへの契機となった。「自分がプロデューサー兼女優として、一緒に組んでいる監督さんに対するうらやましさはあって。自分がイメージしているものとか、考えていることを画面の中に凝縮して撮れるってすごく幸せなことだなって。それはやっぱり監督しかできないことなので。いつかやってみたいなと思っていたところでお声がけいただいたので、ありがたかったですね」。

本作と前後し、14年に公開された監督2作目「欲動」が「距離感を保ちながら向き合った作品」であるのに対し、「とにかく初監督作品なので自分のしたいことは詰めよう」という思いで臨んだ「マンガ肉と僕」は、「悩める等身大の自分をいろんなキャラクターに派生させて描いた作品」になった。「分身でもあり、子どものような存在の作品なので、公開されるのはすごく嬉しいです」と晴れやかな笑顔をのぞかせる。

映画では、ある青年がたどる8年間の女性遍歴が3つの楽章でつむがれる。主人公のワタベは伴奏者であり、主旋律を奏でるのは3人の女性。気弱な大学生のワタベの部屋に居つき、その生活全てを支配するサトミ、バイト仲間だったワタベとの恋愛に依存し精神を病んでしまう菜子、大学の先輩で同じ目標に向かっていたさやか。「いろんな女性を登場させる事によって、女性とは何なのか、女性性とは何なのかということを映画の中で描きたかったというのはあります」。

本作は、「女による女のためのR-18文学賞」(新潮社)の受賞関連作を映画化する「R-18文学賞」シリーズの第3弾として、大賞を受賞した朝香式氏の同名短編小説を映画化している。原作を読んだ杉野監督は、メタファーの面白さや異質な世界観に魅力を感じたと同時に、「男に嫌われるために太る」という選択をしたサトミというキャラクターが「頭から離れなくなってしまった」という。「社会や男性に対して、うまく付き合っていけない、距離感が図れない不器用さ」が自分の中にもあり、サトミにおおいに共鳴したため、映画化を希望しただけでなく、自らこの役を演じることを熱望。特殊メイクで醜く陰気でがさつな女に変身した。

肉の塊のようなサトミが特大の骨付き肉にかぶりつくさまは、異様でおぞましいほどに必死だ。しかし、杉野監督は「演じてきたキャラクターのなかでは一番しっくりきたというか、楽しかったですね」とサラリ。「(特殊メイクを)やってもらった瞬間に、『私サトミになれる』って思いましたね。肉で武装するってこういうことなんだなと、やってもらってわかりました。自分は肉の鎧(よろい)は着ていないけど、心の鎧というか、いろんな鎧を背負いながら生きているように感じるんです。たぶんサトミに対する哀れみに似た感情は、自分自身に対する哀れみやもどかしさでもあるというか。自戒の念を込めてこの映画を作りたいなと思いました」。

脚本を書いている段階から起用を希望していたという、主要キャストの三浦貴大(ワタベ)、徳永えり(菜子)、ちすん(さやか)の適材適所の配役に加え、原作の東京から変更された京都という舞台も映画に情緒をもたらす。「登場人物がある岐路に立たされて、それでも生きていかなければならないと思わせられる印象的なシーンは、画になる場所にしたかった。京都って歴史が積み重なって、人々の感情や、うねりのようなものが、いるだけで感じられる場所。それも、京都を選んだ理由の一つです」

劇中では「女を捨てるのではなくて、女性として、賢く、しなやかに生きる」という、ひとつの理念が提示されるが、杉野監督自身「どうすればそう生きられるのかを知りたくて、この映画を撮ったとも言えます」と明かす。様々な経験を重ねてきたことで、「人生いろいろあるんだなと受け入れられるようになってきた」いま、どのような生き方を求めているのだろうか。

「不寛容だからいろんな物と物が対立しているように思えるので、寛容になって受け入れ合うことがすごく大事だなあと個人的には思うんです。でも分からないですね、答えは。今まさに自分も抗っていて、どうやったらしなやかに生きられるのか模索しているところなので。難しい(笑)」

本作では監督・プロデューサー・出演者の3役を兼ねたが、3つの役割を別々に考えるわけではなく「“杉野希妃”として現場に立っている感覚だったんですよね」と打ち明ける。「いいものを産み出したいと思っているクリエイターのひとりでもあり、自分の肉体や魂を使う表現者のひとりでもあるという感覚で携わっている」というシームレスな視点は、世の中も自分自身も豊かになるような映画へと注がれており、目の前に広がるビジョンは壮大だ。

「世の中の知らない事を研究したり発掘する、宝物探しというか、宇宙を探索する感覚でものづくりをしている気がします。なので、得体の知れないものと向き合うことをずっとテーマにしていくんでしょうし、私にとってはそういうことが表現なんだなと感じます」。

直後に付け加えられた「わからないで~す」の一言が、“映画づくり”という宇宙の無限の伸び代を感じさせる。「答えを観客と一緒に考えていきたい」。そんな思いを込め、“杉野希妃”が宇宙の星をひとつひとつ手探りで集めるように作り上げた映画たちを手がかりに、観客たちは心の中に広がる宇宙を探索していくことだろう。

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