劇場公開日 2015年11月6日

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「社会派映画」ミケランジェロ・プロジェクト カンタベリーさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5社会派映画

2016年8月24日
iPhoneアプリから投稿

日本語吹き替え版は声優に重厚さがいまいち。声が軽い。女性の美術館員は林原めぐみ?

カントクのジョージ=クルーニーは父親がニュースキャスターで、本人も本来はジャーナリスト志望。なので社会派映画をよく作る。

この映画もそうした一作。
第二次世界大戦では多くの美術品が戦火で失われた。
ドレスデン空襲ではギュスターヴクールベの石割人夫が、神戸空襲ではゴッホのひまわりが失われている。

この作品は戦火から美術品を守ろうとした、特殊部隊の話だ。実話ベースだ。隊員は建築家や学芸員、美術品修復家など凡そ戦争に向かないメンバーばかり。時に間抜けだし、ドラマチックさに掛ける所もある。
スペクタクルやアクションもないので、血湧き肉躍る娯楽作品を好まれる向きには向いてない。
彼らの仕事は困難を極める。司令官に貴重な美術品のある教会への攻撃を避けるように依頼しても、鼻であしらわれる。
美術品は命がけで守らねばならないか?
然り、それがクルーニーの答えだ、
美術品は人々の生きた歴史そのものだからだ。
マットデイモンがナチスによって奪われた肖像画を、今は無人となった元の持ち主の住居に返しに行く場面ではっきりしめされる。元の持ち主はもういない。壁に乱暴に書かれたダビデの星が彼らの末路を示している。収容所で死んでるだろう。その場で殺されたかもしれない。だが、その肖像画はそこに彼らが住んで生きていた事を証言する歴史の証言者なのだ。マットデイモンの役どころが美術品修復家である事もそれを指し示している。

数々の美術品を完璧に再現した、この映画の美術スタッフは素晴らしい仕事をしている。

それだけに、美術品を火炎放射器で焼き払うナチス将校はぶん殴りたくなる。

カンタベリー