劇場公開日 2013年4月20日

  • 予告編を見る

「どちらが善でどちらが悪じゃない」セデック・バレ 第一部 太陽旗 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0どちらが善でどちらが悪じゃない

2015年5月13日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

興奮

日本統治下の台湾で起きた台湾先住民族セデック族による坑日運動“霧社事件”を描いた2部作からなる歴史大作。
第一部では、山奥で狩猟など自由に生活していたセデック族が、日本軍の侵攻によって支配され35年、ある衝突で一触即発となり、遂に武装蜂起するまで。

何とも複雑な気持ちになった。
映画としては素晴らしい見応え。歴史背景や重たい題材など最初は鑑賞を躊躇するが、見始めたら最後までグイグイ引き込まれた。が、

日本人の描写がまあ酷い。
暴力的。血も涙も感情の欠片も無い。
権力を振りかざして偉そうにしているくせに、中身は弱く、情けない。
日本の悪行は事実にしろ、見ていてあまり気分いいものではない。

それと真逆のセデック族。
強く逞しく、どんなに虐げられても屈しない。
民族の誇りを懸けて立ち上がる姿は感動的ですらある。
その名の通りの“セデック・バレ(真の人)”。
(頭目モーナを演じた演技初挑戦のリン・チンタイの存在感は凄まじく、その息子役が佐藤浩市そっくりでびっくり!)

もしこの映画、セデック族を誇り高い英雄としてだけ描いていたら嫌悪していただろう。
そう感じなかったのは、クライマックスの武装蜂起シーン。
日本軍が集まった運動会の日、一斉に奇襲をかける。
この時セデック族は、日本人を誰彼構わずほぼ皆殺しにする。首を狩るなど残虐な方法で。女子供まで。

セデック族を虐げてきた日本軍の行いは愚か。
日本人を虐殺してセデック族が流した血の量はあまりに多い。

善悪を描いた映画ではない。
双方の哀しき歴史、罪に心揺さぶられた。

近大