劇場公開日 2013年9月13日

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「李相日の粘り強い演出に瞠目した、晩秋の大雪山」許されざる者 大塚史貴さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0李相日の粘り強い演出に瞠目した、晩秋の大雪山

2022年3月31日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会、映画館

クリント・イーストウッド監督・主演で第65回米アカデミー作品賞、監督賞ほか4部門を受賞した傑作西部劇「許されざる者」(1992)を、李相日監督のメガホンで日本映画としてリメイクした意欲作。

渡辺謙、柄本明、佐藤浩市、柳楽優弥、忽那汐里らが出演した今作の舞台は、江戸幕府崩壊後の明治初期。北海道開拓時代の歴史の中で、かつて「人斬り十兵衛」と恐れられていた男が、再び戦いに身を投じていく姿を描いている。

撮影が行われていた北海道・大雪山を訪れたのは2012年10月下旬。冬眠前のクマが活発化する時期だからと、首に鈴をつけて現場までの山を登った。コメントを取っては待機場所まで移動する…の繰り返しで、現場まで1日4往復したことが今は信じられない。夜になると雨、風が強くなり、傘など役に立たない。ダウンジャケットの下にノートとICレコーダーだけ忍ばせ、真っ暗でぬかるんだ山道を、同業他社の記者の背中を頼りにひたすら歩いた。
23時近く、到着を待ち構えていた渡辺謙がニヤリとして言い放った。
「いいかい、みんな、許されざる者っていうのは、こういう道しか歩くことが許されないんだよ」。

見事なまでの追体験。タイトルの意味を本当の意味で知った瞬間であった。

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大塚史貴