劇場公開日 2013年11月16日

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「皆、自分の母に会いに行く」ペコロスの母に会いに行く 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5皆、自分の母に会いに行く

2014年8月2日
フィーチャーフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

泣ける

笑える

幸せ

重度の認知症の老いた母と団塊世代の息子の親子愛を描き、2013年キネマ旬報日本映画第1位他多くの賞に輝いた秀作。

テーマは認知症、介護、老い、生死。
監督は名匠・森崎東。
それだけ聞くと何だか敷居が高そうにも思えるが、温かなユーモアとしんみりした感動を絶妙に織り交ぜ、誰もがすんなり見れる作りになっている。
60過ぎて漫画家デビューした原作者の実体験。
なので、一つ一つのエピソードがとても身近に感じる。母が汚れたパンツを家のあちこちに隠すエピソードなんてまさに実体験の表れ。
笑わせる所はとことん笑わせ(かなり笑える)、泣かせの場面は目頭を熱くさせ、森崎東のメリハリ利かせた演出が見事。
舞台の長崎の風情と方言、一青窈の主題歌も心地良い。

長いキャリアを誇る赤木春恵は、本作で映画初主演。“世界最高齢で映画に初主演した女優”としてギネスブックに認定。
お茶目でユーモラスで愛らしく、歳と人生経験を積み重ねてきた決して誰にも真似出来ない名演を披露。
堂々たる主演女優!

息子役の岩松了は、見事なハゲ頭!(笑)
冴えないサラリーマン兼売れない漫画家兼自称ミュージシャンという、風来坊のような憎めない親近感が沸く。
ちなみにタイトルの“ペコロス”とはタマネギの事。タマネギのようなハゲ頭の意味。
このハゲ頭が、母と息子の交流を温かくする。

亡き夫は加瀬亮、原田貴和子&原田知世の姉妹共演、老人ホームの面々は個性派揃い。
竹中直人は「トリック」の矢部ネタで笑わせる。

認知症が悪化していく母は、記憶の中の過去を徘徊する。
母の過去は、幸せだったとは言い難い。
酒豪で神経症だった亡き夫、貧乏暮らし、ピカドンの後遺症で死んだ友人…。
何故こうも辛い、悲しい過去を思い出す?
そうではないからだ。
皆、愛した大切な人、大切な思い出。
記憶が失われても心の奥底に覚えている。

今も愛する大切な人たちに囲まれている。
息子はうだつが上がらないかもしれないが、母を思う愛情はひとしお。
孫も面倒見てくれる。
老人ホームの従業員たちも温かい人たちばかり。

先日見た「桃さんのしあわせ」のレビューでも書いたが、こういうのって理想的過ぎかもしれない。
しかし、温かい親子愛、絆、交流が胸に染み入り、こうありたいと思ってしまうのだ。

私事だが、今母親が卵巣癌の治療で入退院を繰り返しており、色々思いながら見た。
尚、母の治療は回復方向に進んでます。

近大