緑なき島

劇場公開日:

解説

「母の灯」「われ泣きぬれて」につぐ石田清吉の製作で、八木保太郎の原作から長崎県五島出身の清島長利「若き日の血は燃えて」「受胎」がある)が脚色し、演出は「汚れた花園」の小坂哲人、カメラは「のらくら海浜騒動」の竹野治夫が担当する炭坑映画である。配役は「風の中の牝鶏」につぐ佐野周二が「噂の男」についで炭坑夫にふんし「颱風圏の女」の山村聡と組んでたくましい男の世界を描く。これに「三百六十五夜(1948)」「生きている画像」と引続き新東宝作品に出演していた老練河村黎吉が松竹に帰って出演「夜の女たち」「一寸法師(1948)」で売り出した新人永田光男も助演する。女優陣は「武装警官隊」の幾野道子、往年「愛染かつら」「家庭教師」等で活躍し現在大庭秀雄監督夫人として家庭にあった森川まさみが、カムバック第一作として姿を見せる。この映画は通称軍艦島と呼ばれる長崎港外二十キロの海上にある端島炭坑に、その特異な環境をキャッチするため一大ロケを敢行したセミ・ドキュメンタリー映画である。

1948年製作/79分/日本
配給:松竹・京都
劇場公開日:1948年11月8日

ストーリー

長崎港外二十キロの海上に通称軍艦島と呼ばれる端島炭坑がある。戦時中、この島の採炭夫細川五郎と内山大助は、ある日折からの風浪に乗じて脱出をはかり、五郎は逃げおおせたが大助は監視員に捕らえられか酷な拷問にかけられた。そして長い戦争が終わり、平和がよみがえった。細川五郎は多数の坑夫応募者たちに混じり、ひょう然と再び端島のさん橋を上った。島は見違えるように明るくなっていた。大助は今では労働組合の委員の一人として島の民主化に努力し、近く島の名物男山本修造の娘すみ子と結婚することになっている。大助は五郎を喜んで酒場に迎えたが、五郎は大助とすみ子の婚約を知って何故か冷たかった。そして五郎はその時、かつての情婦で、今この酒場にいるしげ子に再会した。一方島を脱出する以前すみ子と将来を誓い合った五郎は、今島の人望を一身に集めている大助にとってかわり、同時にすみ子をも奪い返そうとかん計をめぐらし二人の対立は鉱員、職員両組合の統合可否をめぐって白熱化し、組合長改選を目前に控え島にいろいろの波紋を投じた。すみ子は五郎の人を恐れぬ誘惑にずるずる引きずられて行った。大助はすみ子が五郎を本当に愛すなら自分はあきらめてもよいと思っていた。五郎とすみ子の関係を知ったしげ子はしっとに悩んだ。やがて組合長選挙の日が来た。五郎の巧みなかん計と、大助の誠実とは全く形勢伯仲となって開票が迫る。結果は大助の勝利と見えたその瞬間場内真暗となった。発電機はこわされ、ガスが充満し、坑内は危険にひんした。五郎一味の仕業である。五郎の悪計を知ったしげ子とすみ子は、遂に真実を人々に訴えた。大助は五郎に向かって自首をすすめたが、五郎は却って大助を傷つけ、遂に警察の手に逮捕された。大助の絶叫により五郎はリンチをまぬがれたのである。

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