恋する妻

劇場公開日:

解説

「大江戸の鬼」の伊藤基彦が井内久(第一回担当)と共同製作する。山岡荘八の原作を「今日は踊って」の岸松雄が脚色し「大江戸の鬼」の萩原遼が昭和十五年度吉屋信子原作「蔦」以来七年振りで現代劇を演出沈黙していた三村明が久々で撮影に当る。「誰か夢なき」「リラの花忘れじ」(松竹大船)の藤田進と松竹大船より転入社第一回目の三村秀子の主演に「愛よ星と共に」の浦辺粂子(大映)「おスミの持参金」の河津清三郎、清川荘司、吉川満子、田中春男らが共演する。

1947年製作/76分/日本
配給:新東宝
劇場公開日:1947年12月2日

ストーリー

鶏の鳴声と共に雨戸の隙間から、朝の光が差し込んでくると、真喜子は誰よりも早く起き出て家事にいそしむのだった。り災後は姑と義弟と三人、六畳一部屋の間借生活をしていた。それにしても夫の良雄はとうに復員しているはずなのに、どうして帰っては来ないのだろう--過ぎし日の楽しい新婚生活も、わずか三週間の思い出なのだ。-母親ちかも祥司も、みんな待ち焦がれているのに--。しかし良雄はどうしても家に帰る気にならなかった。未だ外地には沢山の同胞が復員出来る日を待っている。そしてその家族達が皆その帰りを待ちわびている。どうして自分だけオメオメと帰れるだろうか。良雄は復員したその日から、多くの同胞のために復員船で働いているのだ。真喜子に良雄のその気持が判らない訳はなく、始めこそ恨んだが真意を知ってからは、一時でも恨んだことを恥ずかしく思った。ある日突然良雄から便りがあった。船が寄港するので、明日の昼頃帰ってきて翌朝発つというのだ。真喜子は嬉しさのあまり何もかも手につかなかった。江藤夫婦が買出の仕度やら、母も祥司も出来る限りの努力を惜しまなかった。何年振りかで夫と会えるというのに、たった一晩、しかも間借り生活ではどうにもならない。それを察してか、江藤さんの機転で、母も祥司も、真喜子一人を残して芝居見物に出掛けていった。玄関に元気な良雄の声がした。喜びのあまり飛んで出た真喜子の前に、四人の顔が並んでいた。心づくしの御料理もビールも三人の友人に平らげられ、揚句の果てグウグウ高いびきで寝てしまった。何年振りかでたった一晩会えるという日に--。翌日は晴れた清々しい朝だった、井戸端で顔を会せた真喜子に良雄は、ぼくは幸福だ!ぼくには優しい妻があり母も、祥司もいる。だのに、あの人達には復員してきても帰る家も家族もないのだ。せめて一夜だけでも、暖かい畳の上で、暖かい心で慰さめてはいけないのだろうか。自分一人休みが出て幸福な一日を過すということはぼくには出来ないのだ、しかしお前には気の毒なことをした許してくれ--。真喜子は自分の心を恥じた。美しく明けそめる暁の空、それよりもなお美しい人の心に感激したのだ。自分だけの幸福を求めていた狭い自分を深く反省した。今度帰ってくる時は仕事の終った時だ、永い間苦労をかけたが思い出の箱根へ何年振りかで行って見よう。遠く去って行く夫を見送る真喜子の目が涙で曇っていく。--恋する妻よ晴れて帰るその日まで--

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