火の鳥(1956)

劇場公開日:

解説

炎の女生島エミの多難な半生を描いた伊藤整の原作を「朝霧(1955)」の猪俣勝人と「死の十字路」の井上梅次が脚色し、井上梅次が監督した。撮影は「栄光と驀走王」の岩佐一泉。主な出演者は「東京バカ踊り」の月丘夢路、大坂志郎、「殺人計画完了」の三橋達也、「太陽の季節」の中原早苗、「色ざんげ(1956)」の山岡久乃などの他、北原三枝、芦川いづみ、フランキー堺などが特別出演する。

1956年製作/99分/日本
原題:Phenix
配給:日活
劇場公開日:1956年6月14日

ストーリー

バラ座のスター女優生島エミはハーフだが、父エンミイ急逝の報にもめげず、その夜も舞台で熱演し満員の観客を魅了していた。舞台がハネ、劇場裏のバー“かもめ”に集った一同の前に元座員の飛鳥が富士監督と春山プロデューサーを連れて現われ、エミに映画出演の話を持ちかけた。照明係の徳さんに送られて我家に帰ったエミは、その夜泊りに来た愛人の演出家田島有美に映画出演の希望を打明け承諾を得ると翌日、撮影所に赴いた。富士監督と共に、彼女が主演する“火の鳥”の相手役を探して所内を歩くエミは、ふと半裸の青年に眼を止めた。その夜スター北原嬢のパーティで、この青年、長沼敬一と知り合ったエミは恍惚と踊り合い、彼の抜擢によって“火の鳥”の撮影は順調に進められた。完成試写の日、長沼は基地反対デモに参加して検束されエミは驚いて警察に行ったが会えずじまいのまま家に戻った。そこに待ち受けた日光劇場主の草壁はコケラ落しにバラ座の公演を依頼した。だが稽古の仕上げも近い日長沼に逢ったエミは辻堂海岸で狂おしい愛慾の日を送り、日光劇場はエミの失踪で大騒ぎとなった。代役は山際芳子と決まり、流石のエミも新聞記事に胸を痛めたが偶然ホテルに来た脚本家猿丸に発見され、再び日光劇場に戻って満場の注視を浴びながら持役を熱演した。帰途、以前の愛人杉山に会ったエミは彼から、舞台での情熱の表現を賞められ、ほのぼのとしたものを感じつつ彼と握手を交す。だが又もや持ち込まれた映画出演の話を、次の公演が決まっていると田島に反対されたエミは団体行動に嫌悪を感じ、加えて徳さんを愛する腹違いの姉君子から、徳さんの心はエミにあると責めたてられた彼女は、長沼の罠にかけられた愚かな愛慾生活をも牧田和子から知らされ孤独感に泣いた。翌日父の年金を総額受け取り総てを清算したエミはバラ座を辞め、長沼とも縁を切った。やがて、セットの階段を“新しい人生の門出”と心にさけびながら一歩一歩下りて行くエミの雄々しい姿が見られた。

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スタッフ・キャスト

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映画レビュー

4.0月丘夢路は本当の大女優である。

2022年9月9日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 劇団の大女優として、元恋人、劇団の代表、新人俳優、それぞれの男女の関係を揺れ動く。火の鳥のように熱い女優を月丘夢路が演じている。イギリス人の父を持つハーフである。
 日活の北原三枝、長門裕之、芦川いづみらのスターも少しだけだが出てくる。仲代達矢の本格的映画デビュー作品。話し方や冷静なニヒルさは当時から彼の持ち味なのだ。この時代にはよくある若者の革新系・自由な劇団員としてハマっている。中原早苗も堂々としている。

 伊藤整の1953年の「火の鳥」を原作にしており、戦後あまり立っていない時期にこのような奔放な生き方の女性を描いているのが凄い。その複雑な男女関係と思い立ったら突き進む女性を演じきった月丘夢路は本当の大女優である。

広島市映像文化ライブラリー 月丘夢路特集

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M.Joe
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