劇場公開日 1954年4月21日

愛染かつら(1954)のレビュー・感想・評価

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2.5これはフェミニズム映画

2021年6月5日
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鑑賞方法:映画館

京マチ子さんには合わない役でした。やはり田中絹代さんの映画です。

高石看護婦(京マチ子)は、患者(幼子)が亡くなったらいきなり激しく甲高い声で泣いたので新人看護婦かと思いきや、手術中のオペナースとしての器械出し及び他のナースへの指示は沈着冷静かつ正確で手練れのプロ。退職後、入賞した応募曲(作曲の才能もあるのです)をスタジオで歌ったところ歌手に向いていると言われ歌手デビューします。つまり夫の死後、娘を抱えつつ常に経済的に自立して働く女性なのです。大病院の御曹司に口説かれたからといって、ラッキー!と浮かれる人ではないのでした。

ナース仲間も若先生(鶴田浩二)の親友の妹も動機は異なれど「高石さん」の周囲を嗅ぎまくるスパイ活動をします。結果、ナース達は高石さんにシンパシーを抱き彼女を応援することに、兄の親友を狙っていた妹も彼女には負けたと思います。夫と死に別れ働かなくては子どもを養えない彼女にやましいことは何一つなく、誰も彼女のことを悪く言わないこともわかったからです。

高石さんの姉役(高石さん同様、夫を亡くしています)の三宅邦子は上品で正直でとても良かったです。いきなり名言を仰って観客の度肝を抜きます。「あ、ご飯の支度だわ。こうやって一日三食作ってるうちに女は年取ってしまうのね」や「母親は女でもあるのよ」など。

高石さんに恋してる若先生は世間知らずで想像力不足。純粋で一直線過ぎました。でも良いところも沢山あります。若先生は自分でアイロン掛けをします。アイロンは重く火傷の可能性もあるし下手な人にアイロンされるとたまったものではありません。だから自分でするのです。お洒落で素敵です。新米ですが医者としては子どもの患者さん(名前で高石さんの娘であることと、彼女が子持ちであることがわかるのです!)の診察がとても丁寧で親切ですし、父親が院長の従来の金持ち向け病院経営を批判し誰もが平等に診察も治療も受けられるオープンな病院にしました。看護婦の労働環境も改善され意見が言いやすい風通しのよい職場になりました。

高石さんが舞台で歌う当日は何十人もの看護婦同僚がナース姿で総見です。その手配は若先生のはからいによります。舞台袖から様子を見た高石さんも感動して、既に着ていたドレスからナース服に着替えその姿でステージに出て歌います。若先生は、歌い終わった高石さんを楽屋で迎え改めて…。ハッピーエンドです💕

レビューであらすじを書くことないのですが、書くことで頭と心の中の❓️を整理したかったのでした。それでこの映画はフェミニズム映画なんだとわかりました。

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talisman