劇場公開日 1968年12月14日

「日本妖怪対外国妖怪」妖怪大戦争(1968) 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0日本妖怪対外国妖怪

2022年6月14日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル、DVD/BD

楽しい

単純

大映の“妖怪シリーズ”第2弾。1968年の作品。

前作『妖怪百物語』とは関連ナシ。あれはあれ、これはこれ。
もしくは、同じ世界観で別場所で起きた“妖怪別物語”。
三池崇史監督による2005年の『妖怪大戦争』及び2021年の『妖怪大戦争 ガーディアンズ』は本作が下敷きになっている。

墓荒らしに荒らされる古代バビロニアの遺跡。4000年の眠りから大妖怪“ダイモン”が復活。
日本に飛来し、伊豆半島のとある藩の善良な代官に乗り移り、生き血を求めて人間を襲う。
このままじゃアカン! 日本妖怪の名折れや! 日本妖怪の底力見せたるで!
…と言わんばかりにダイモンに立ち向かっていくが…
こりゃあきまへん。海外さんの妖怪、強過ぎまっせ…。

前作は悪人どもを怖がらせ懲らしめる、まだホラー要素のある作風だったが、好評を博し妖怪たちが人気になったので、古今東西今回は妖怪たちの大活躍。
よりスケールアップを! よりワールドワイドに!…を狙ったかは定かではないが、
日本の妖怪対外国の妖怪で、前作よりもストレートにエンターテイメント性を強化。
巨悪に妖怪たちが立ち向かう、クライマックスは日本各地から妖怪たちが大集合&大合戦…なるほど確かに、三池版の原点。

登場妖怪は、からかさ、ろくろ首、油すましら前作とほぼ同じ面子。
主役格の妖怪として、河童。江戸っ子風ひょうきんな性格。
そんな愛嬌があってユーモラスで愛着沸く日本妖怪とは対して描かれるダイモン。
ダイモン。つまり、デーモン=悪魔。
顔は邪鬼、身体は獣の強烈ビジュアル。怖い上に、生き血を吸い、人間の身体を乗っ取る。
ドラゴンの形をした杖から技を駆使し、分身、巨大化まで!
海外の大妖怪に、日本の妖怪軍団もたじたじ…。負けるな、日本妖怪!
尚、何故長い眠りから目覚めたバビロニアの妖怪が日本の一地域に飛来して人間を襲うのか?…というのは、何故怪獣は日本にだけ現れるのか?…と同じく疑問を持つ事自体が野暮な暗黙の了解である。

妖怪たちは前作同様、特殊メイクや着ぐるみやマペット操演。
チープさ…いや、素朴さを漂わせつつ、特撮技術は前作より向上。
特に序盤の嵐を伴ったダイモンの船襲撃、クライマックスの巨大化ダイモンは特撮の醍醐味充分。

妖怪たちが活躍し、勧善懲悪な話で、エンターテイメント性が増したという事は、子供向けになったという事でもある。
ダイモンの強面以外全く怖さの欠片も無く、怖い妖怪が見たい人には“コレジャナイ”だろうが、本作はあくまでユニークな妖怪推し。
人間に悪戯したり、困らせたり、怖がらせたりするが、時には外敵と闘う。
ひょっとしたら妖怪は、日本の“護り神”なのかもしれない。

近大