劇場公開日 1962年9月29日

「女とは何かと言うことでは、成瀬監督作品に共通するテーマの作品だと思います」放浪記(1962) あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0女とは何かと言うことでは、成瀬監督作品に共通するテーマの作品だと思います

2020年5月11日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

成瀬監督作品で林芙美子原作のものは
1951年 めし 原節子
1952年 稲妻 高峰英子
1953年 妻 高峰三枝子
1954年 晩菊 杉村春子
1955年 浮雲 高峰秀子
ときて
1962年の本作となります
しかも林芙美子のデビュー作にして出世作
それを東宝創立30周年記念作品として撮るのだから気合いが入っているのは間違いないでしょう

放浪記は本作公開の前年に森光子主演で芸術座での舞台公演が始まり大ヒットをしています
なんと2009年までの空前絶後のロングランになったのはあまりにも有名です
森光子がでんぐり返りすることで超有名なあれです
そこが最大の見せ場のように言われていますが、本作にはそれはでてきません

本作の製作が決まったのはこの舞台の大成功がきっかけであったのは間違いのないことかと思います

と言うことで、ノンストップの舞台ですから、その舞台俳優を使っては撮影することはできません
音楽の古関裕而だけはスライドしています

では本作の主演女優を誰にするかが問題です
原節子には、このヒロインは逆立ちしてもできはしません
杉村春子は年を取り過ぎです
当然、高峰秀子が主演になるわけです

本作はその高峰秀子の演技の頑張りを楽しむことが目的の映画となっているようなあんばいです

成瀬監督らしさというより、林芙美子の放浪記を忠実に映画化することに力点がおかれてあります
田中絹代もあまり見せ場はないです
成瀬監督には田中絹代へのリスペクトはあってもなんとしても美しく撮りたいという妄執はないので普通におばあさんとしての佇まいで、サンダカン八番娼館の時の姿を予告したものになっています

それでもこの二人をして、女とは何かと言うことを描こうとしていることでは成瀬監督作品に共通するテーマの作品だと思います

あき240