劇場公開日 1989年2月4日

「永遠の勝新座頭市」座頭市(1989) 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0永遠の勝新座頭市

2021年8月25日
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鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

単純

興奮

シリーズ26作目。1989年の作品。
『~笠間の血祭り』以来16年ぶりで、最後の勝新座頭市。

主演のみならず、監督・製作・脚本も兼任。
久々の座頭市に相当の意気込みが窺い知れる。
以前、勝新自ら監督した『~折れた杖』は異色の作風だったが…

獄中の市。
出所した市は、馴染みの漁師の元にやっかいになる。
その一帯は、八州取締役に取り繕うとする二大やくざが睨み合う。
市は一方の賭場を荒らし、一方から用心棒の口利き。
そんな中、孤児たちの面倒を見る少女と心を通わせるが、彼女を八州が狙う。
遂に二大やくざ一家が争い、市もその渦中に…。

これが自身最後の座頭市になると分かっていたのか、それともこれを起点にまた新たにシリーズを作ろうとしていたのか。
王道も王道。
話に展開、二大やくざの抗争、悪徳取締、子供たちとの交流、お馴染みイカサマ博打、そしてクライマックスの大立ち回り…。
多少間延び感はあるものの、集大成といった感。
一癖二癖あるキャラを、一癖二癖ある豪華キャストが演じる。中でも、市と心を通わせ、斬らざる運命にある浪人を、緒形拳が好演。この浪人設定も無くては無らぬ。

人によって本作は賛否両論。“作品”としてではなく、作品を巡る“スキャンダル”で。
脚本は有って無し。その日その日変えられる勝新のワンマン体制。
大幅予算、日数オーバー。公開までに間に合うか。
でも最大のスキャンダルは、真剣による死亡事故。勝新の息子の奥村雄大が真剣とは知らずに相手を斬って死亡させてしまった事件…。あくまで“事故”を主張し、裁判では無罪に。撮影続行する勝新にはマスコミや世間の集中砲火…。
絶対にあってはならぬ事。管理体制の悪さが招いた最悪の不祥事。
これでお蔵入りや大コケだったら目も当てられないが、作品は大ヒット。勝新の執念。

勝新以後も多くの俳優が演じた座頭市。
しかし最近はビートたけしや綾瀬はるかの方が有名で、殊に若い人の多くは勝新座頭市を知らない。実際私のリア友は、「座頭市はビートたけしでしょ。勝新太郎なんて知らないし」。
何足る事!
勿論、それぞれの座頭市も魅力があった。
だけど、やっぱり座頭市と言ったら、勝新太郎!
あの茶目っ気、あのキャラ、あの殺陣、あのカッコ良さ。
今回シリーズ全作通して見て、そう思った。

お天道様の下を歩けないやくざ者。
が、弱きを助け、悪を斬る。
盲目でありながら、居合斬りの達人。
邦画史に残る名シリーズ、名ヒーロー。
勝新太郎没24年経つが、座頭市は今も日本人の心を旅し続けている。

約半年かけて座頭市レビュー終了!
次は何にしようかね(^^)

近大