劇場公開日 1954年7月25日

「となりのニトロ」恐怖の報酬(1952) kossyさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0となりのニトロ

2019年8月17日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

 149分に及ぶ大作。前半では危険な条件を飲むしかない労働者たちとアメリカ人の資本家たちとの対立する構図も浮かび上がる社会派作品となっている。

 マリオはフランス人でその日暮らしの流れ者といった雰囲気だが、帰国しようにも金がない。そして来るのは簡単だが、抜けるのは困難といった辺境の町。職がなく食うのが精いっぱいという者たちで溢れかえっているのだ。そんな彼にも酒場で働く恋人リンダ(ヴェラ・クルーゾー)がいるのだが、彼らの住む町にフランスからいわくつきの顔役ぽい男ジョー(ヴァネル)がやってきて、ジョーを兄貴分と慕ったおかげで、リンダはホッタラカシ。トラックにしがみつくリンダを振り払うシーンなんかでは可哀そうに思えてくる。女優クルーゾーはセクシーでしかも腋毛も魅力的なのだ。

 かつては密輸で儲けてきたジョーもふらりふらりと旅をして、金が底をついたためこの町にやってくるしかなかったのだ。知り合いである石油会社役員のオブライアン(ウィリアム・タッブス)に掛け合うが相手にされず、マリオの仲間であるルイジ(ファルコ・ルリ)とも折り合いが悪くなってしまう。ちなみに、このルイジ、スーパーマリオにそっくりだ(笑)。名前が逆じゃん・・・

 そんなときの大火災。現地の労働者も13人死亡。労働争議とか革命とか、一触即発の雰囲気さえ見せるのだが、アメリカに占領された感もある石油会社。今でも続く、利権主義の大国じゃ太刀打ちできない。そして、ニトロの運び屋には流れ者で家族のいない者を選抜する。選ばれたのはマリオ、ルイジ、ビンバ(ヴァン・アイク)、そしてスマーロフ(ジョー・デスト)だったが、ジョーは多分脅迫によって一人2000ドルの報酬の仕事を手に入れた。そして、選ばれなかった一人の若者も自殺・・・母親へ仕事が見つかったから安心してと手紙を書いたばかりなのに。

 後半はスリル満点のニトロ運送。山道の切り替えし場所や巨大な落石、そして原油の沼を突破するなど、手に汗握る展開となる。現代からすると稚拙な部分もある映像なのに、スリップするタイヤの大写しなどはかなりインパクトがあるのです。

 そしてジョーの性格の変貌ぶり。トラックは二台で進むのだが、ジョーと組んだマリオのおかげで、ヤクザのような性格から、徐々に小心者の性格が浮き出てくる。この性格の変貌がまた面白い。
 火災現場に生きてたどり着いたのはマリオ一人。アメリカ人たちからは勇気を称えられ労いを受けるが、喜んで帰る途中はよほど楽しかったのか危険な蛇行運転。やっぱり彼もトラックごと崖から転落。救いようのないエンディングを迎える・・・

 アメリカ資本主義と、フランス人、イタリア人の流れ者労働者。そして映像には出てこないが危険な労働を強いられる現地の労働者。現代にも通ずる構図があるということは、世の中何も変わってないということか・・・

kossy
りかさんのコメント
2023年1月25日

こんばんは、共感コメント
ありがとうございます。
リメイク版もあるのですか。
キイハンター、とか、色々な作品が真似しているから、サスペンスの名作なんですね。
サスペンス物は、時間を忘れて見入ってしまいますね。
撮影も俳優さんも大変だなと思います。
リンダさんはおしゃれでスタイルも良く
現代でもバッチリです。
教えていただいた社会背景の厳しさから
命に代わる報酬を稼ぎに行った事が
わかりました。ありがとうございました。
またよろしくお願いします。

りか
りかさんのコメント
2023年1月25日

詳しく解説していただきまして、
よく分かりました。
一度観ただけでは、?????でして。
ありがとうございました😊

りか
kossyさんのコメント
2019年8月22日

ありがとうございます!!
本文はそれほどでもないんですけどね・・・(滝汗)

kossy
mittyさんのコメント
2019年8月22日

レビュータイトル、オモロイですね。

mitty