サロメ(1918)

解説

二千年の昔ユダヤに咲いた紅薔薇の様な、サロメの奇しくも美しい伝説は、多くの文学者の筆によって様々に脚色されて居るが、本映画の筋はエイドリアン・ジョンソン氏が特にバラ嬢をサロメの性格にあて嵌めて書卸したもの、人口に膾炙せるオスカー・ワイルドの原作とは大分趣きが異って、著しく映画劇化されたものに成って居る。監督は殆どセダ・バラ嬢の全作品を監督したJ・ゴードン・エドワーズ氏で、予言者のジョンにはアルバート・ロスコー氏が、ヘロド王にはレイモンド・ナイ氏が夫々扮して立派な演技を見せて居る。余りに深刻なバラ嬢の演出振りが、米国の検閲官の目に留って或州では数場をカット・アウトされ、又或州では全然上演を禁じられたと伝えられるのに見るも、如何に素晴らしいものかが窺われよう。切に完全な画面の見られん事を祈る。

1918年製作/アメリカ
原題:Salome

ストーリー

ユダヤの王ヘロドはローマ皇帝の力を借りて、正当なる王を追い却け、王位に即いて暴虐なりし為、人民の恨みの的と成って居る。ヘロドは我が位置を固めん為に王の妹ミリアムを后とする。ミリアムの腹心の者と、その兄とは、ダヴィッドを大僧正に任命する様ヘロド王に懇願したが、予て人民の味方であるダヴィッドを憚って居る王は仲々承う様子も無かった。時に王の従妹で宮廷の花と唱われたサロメが王を煽動するので、王の心も漸く動き彼等の望みに同意した。然し腹に一物あるサロメは、我を恋して居る衛兵の長セジャナスに命じてダヴィッドを水に溺れさせて命を奪ってしまう神の福音を説く予言者ジョンの風評は、サロメの耳にも伝って来た。彼女はジョンを町へ招いたが、一目彼の姿を見るや、姫の眼は情熱に燃え、ジョンを我身のものとせんと深く心に決したのであった。然し勿論ジョンは姫の言葉には耳も貸さず、貝管神を人々に説いて居った。サロメは后のミリアムが次第に勢力を得て行くのを見て心安からず、王がローマに出発の前后から受けた盃中の酒に毒を混ぜて、ことさら王の飲むを止め、毒酒なるを証して王と后との仲を割く。ヘロドがローマから帰国した時、サロメはミリアムに、王は彼女の兄を殺す命令を発したから、兄を助けんと思わば、王を今宵の中に殺してはと、言葉巧みに勧めるので、ミリアムは短剣片手に王の寝所へ忍び込んだ。サロメは不意に物蔭から現れて后の刄を止め、王をして后を馘らしめてしまう。ヘロド王が将軍連を招いて盛大な餐宴を張る晩が来た。その席上サロメは七色衣の舞を舞って、その褒美として生血の滴るジョンの首を求める。サロメが熱愛して居たジョンの冷い唇に接吻した時、大暴風は宮廷の中に渦巻いた。神の怒りと怖れ戦ったヘロド王は、兵士に命じてサロメを楯の下に惨殺させる。

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