劇場公開日 1953年10月18日

「本当の主人公は二人の女性、そしてタイトルの意味」地上(ここ)より永遠に あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0本当の主人公は二人の女性、そしてタイトルの意味

2018年11月25日
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波打ち際でのキスシーンが本作の代名詞となるほど有名なシーンだ
本作の主人公はもちろんプルーイットだ
モンゴメリー・クリフトが大人の演技をみせてくれる
そして準主役はバート・ランカスター演じるウォーデン曹長
プルーイットの上司に当たる彼とその直接の上官であり部隊の隊長の妻との危険な不倫シーンがその有名なシーンだ

不倫の妻はデボラ・カーが演じており、仕事ができる男が不倫に走ってしまう妖しい美しさを存分にスクリーン一杯にみせる

そして主人公プルーイットの相手役のホステス嬢ロリーン役のドナ・リードもまた負けずに薄幸の身の上を一目で演じてみせる

ラストシーンではじめて本作のタイトルの意味が分かると同時に本当の主人公が誰であったのが分かる
実はこの二人の女性が本当の主役であったのだ

男達は結局職場を一番大事にしているのだ
それは仕事は適当、仕事に関係無いことでパワハラしまくり、不倫三昧で勤務自体も怪しい大尉も同じだ
彼は職場を遊び場と考え彼なりに愛している

ウォーデン曹長も将校としての責任を負うのは嫌でも、現場仕事を愛しているのだ

反抗的なプルーイットですら、大怪我をしていても、部隊に戻れば逮捕されるかも知れなくとも、いざとなれば部隊に駆けつけようとする程に職場を愛していたのだ

地上より永遠に
このタイトルはイギリスの詩人キプリングの詩から採られたとのことだが、ラストシーンの二人の女性の心境に掛けられている
ここ美しいハワイの地から離れても、ここでの愛を忘れないとの意味だ

ハワイを離れホノルルの街並みを遠くに見ながら客船のデッキから海に投げ入れられるレイ
浜に流れ着けばまたこの島に戻れるとのおまじない
しかしレイは波間をただようだけで永遠に着きそうもなく二人は落胆するのだ

ここを地上と書くのは日本の配給元の宣伝マンの卓越したセンスだ
それは死を遂げるプルーイットにもかけてあるのだ

物語は原作小説の良さに依るものではあるが、あの渚のキスシーンをはじめとした監督の演出と撮影
そして俳優達の素晴らしい演技が本作を永遠の名作にしているのは間違いない

あき240