悪漢の唄

解説

ニューヨーク、メトロポリタン・オペラ・ハウスの有名な歌手ローレンス・ティベット氏がエム・ジー・エム社に招かれて主演する第1回作品で全発声全テクニカラーによる歌劇映画である。フランツ・レハール、A・M・ヴィルナア、ロベルト・ロダンスキーの合作になる有名なオペレッタ「ジプシーの恋」を基として「風」「好いて好かれて」のフランセス・マリオン女史と「野生の蘭」「上海夜話」の原作者ジョン・コルトン氏が脚本を執筆し、俳優として名高いライオネル・バリモア氏がその処女作品「マダムX」に次いで監督に当たったものでティベット氏の相手女優は、舞台で知られているキャサリン・デール・オーウェン嬢が勤め、同じく舞台出のナンス・オニール嬢、ジュディス・ヴォセーリ嬢、「鉄仮面」のウルリッヒ・ハウプト氏、「スウィーティー」のウォーレス・マクドナルド氏、バー・マッキントッシュ氏、ライオネル・ベルモア氏、「ホリウッド・レビュー」のオリヴァー・ハーディー氏、同じくスタン・ローレル氏等が共演している。撮影は「肉体と悪魔」「コサック(1928)」のパーシー・ヒルバーン氏と「ボー・サブルウ」「水盡くる大地」のシー・ガードナー・ショーエンバウム氏が担任している。

1930年製作/104分/アメリカ
原題:The Rogue Song

ストーリー

西暦1910年の真夏--南露カイシャー山嶽地方に時ならぬ吹雪が突然襲って住人を驚かした。その頃コーカサスの山間に篭る山賊がいて一集落をなし、出でては掠奪をほしいままにし、殊に権勢の人々を悩ましていた。首領をエゴールと称し風貌逞しく気骨稜々、天性闊達の男で美声の彼は歌を唄うのが得意で有名だった。突然の吹雪でリガへの途上、往路を遮られたベラ姫の一行は山腹の宿に避難せねばならなくなった。折から、エゴールが来て唄っているのをベラ姫はその美声に感じて彼を呼びよせる。勝気な彼女はエゴールの素性を聞いても恐れず、むしろその男らしさに心をひかれた。付添のタチアナ伯夫人も彼に恋心を抱いていたので嫉妬のあまり策を設けて彼を捕えさしめ死刑に処そうとしたがベラ姫の計らいでエゴールは危い処を逃れた。その後不敵なエゴールはリガの宮殿に催された舞踏会に現われタチアナ伯夫人を脅かしたがベラ姫の弟セルジ公とは自分の妹ナディアを殺した人間であることがわかりこの機会とばかり彼をその場に殺害した。弟の不慮の死にベラ姫は気も狂わんばかりに嘆き、エゴールの弁解には耳を貸さず激しく彼を罵り侮辱を加えたので憤然彼は姫を拐かし、きびしき追っ手を撃退しつつ山塞に帰った。エゴールは身辺の危険を感じて山塞を引き払い部下の一隊と共にベラ姫を引き連れて山を越え、砂漠を渡り、天幕生活を送りつつ新しき土地を求めた。姫を心から愛しながら彼の理性は、愛妹の敵、彼女の階級を憎む心に、彼女をあらゆる労役に従事せしめる。しかし彼の恋心は益々つのるばかりであった。エゴールの自分に対する恋情を知った姫は巧みに彼を欺いて叔父パテルの城に通ずる路を通ることになる。そして機会を見て脱出を計り、エゴール腹心の部下ハッサンを色仕掛けで説いて折からの雷雨を幸い逃走を企てるが結局失敗に終わる。しかし一行はいつか城に近づいていた。この時パテルが一隊の兵士を率いて城から現われたちまちエゴールを捕え樹木に縛り彼を折檻した。意外の事件にハッサンは彼の前に罪を詫びて自刃した。エゴールは日夜烈しく打たれたが彼は従容として動かず、好める歌を誦しつつあったが、遂に苦しさに耐えかねて気を失ってしまう。ベラ姫は自分の部屋に閉じ篭り彼の唄を聞くに耐えず煩悶していたがエゴールの気絶したのを見て彼女もまた倒れてしまった。土牢にエゴールを訪ねたベラ姫は叔父その他をしりぞけ己が過てることを詫び、愛は死や憎悪よりも強いものであると告白したが2人の間には越えることのできぬ階級の垣が横たわっていた。エゴールは姫の取り計らいで、城を出て馬上の人となり声高らかに好める唄を口ずさみつつ去っていく。ベラ姫は思い深げにその後ろ姿を見送るのであった。

全文を読む(ネタバレを含む場合あり)

スタッフ・キャスト

全てのスタッフ・キャストを見る

受賞歴

詳細情報を表示

映画レビュー

映画レビュー募集中!

この作品にレビューはまだ投稿されていません。
皆さまのレビューをお待ちしています。
みんなに感想を伝えましょう!

レビューを書く