劇場公開日 2013年3月1日

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「負の歴史をぶっ飛ばす映画ならではの無双劇」ジャンゴ 繋がれざる者 オレさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5負の歴史をぶっ飛ばす映画ならではの無双劇

2020年12月8日
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鑑賞方法:VOD

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黒人奴隷制度が過酷さを増す1858年を舞台に、黒人奴隷のジャンゴと賞金稼ぎのドイツ人歯科医シュルツの2人がジャンゴの妻ブルームヒルダを救うため、残虐非道な領主カルビンキャンディのもとに向かう姿を描いた、クエンティンタランティーノ監督渾身の西部劇。

長年西部劇への憧れを公表し続けていたタランティーノ監督が放つ3時間に迫る超大作で第85回アカデミー賞において作品賞を含む5部門にノミネートし、助演男優賞と脚本賞の2部門を受賞、さらには第70回ゴールデングローブ賞でも同2部門を受賞するなど批評的な面で絶賛され、興行収入の面でもタランティーノ監督作品内で過去最高を記録するなど興行成績の面でも評価の高い作品である。

中でもタランティーノ監督前作の『イングロリアスバスターズ』での妙演も記憶に新しいクリストフヴァルツ演じるドクターキングシュルツの存在感が前作にもまして絶妙で、生死問わず賞金首を狙う冷酷無比な面や仕事の都合で同行を依頼したジャンゴの射撃の腕と愛する妻を救いたいという心意気に胸を撃たれ、元黒人奴隷の身であったジャンゴを相棒のように、時には彼の師のように、彼の父のように、一人の人間として敬意を払い平等に扱おうとする姿にハンスランダ大佐とまた違った正義心も兼ね備えた人間性も感じさせ、3年という短い期間で2度のオスカー受賞という快挙も納得の名演をみせた。

また2人のターゲットとなる極悪非道の人種差別主義者のカルビンキャンディ演じるレオナルドディカプリオの吐き気を催す邪悪な存在も必見だ。
どう見ても作中で最も悪人なのだが、当時の法は犯していない為、賞金首のように銃殺してしまうことが出来ない厄介な立場の上、奴隷同士を戦わせるマンディンゴという悪趣味な行為を心底楽しんでいて、自分の行為がどれだけ異常かを理解していないほどドス黒い悪役であるのに、その初登場時の姿に嫌悪感よりも期待感が増してしまうのが彼のすごいところである笑。
しかも中盤から終盤にかけての出演で実際のところ1時間そこらしか登場していないのに記憶に焼き付くあのイヤな笑顔笑。
2010年代のディカプリオは正統派な主人公よりクセのある役が多かった気がするが今作は特にその傾向が強かった気がする笑。

1時間弱のシュルツとジャンゴの賞金稼ぎの日々、さらに1時間超のキャンディランドの非人道的な凄惨な出来事の数々、そしてバレた2人の企み、激怒したキャンディと不本意な結末とキャンディに対する嫌悪感が爆発したシュルツの子どものようなマウントの取り合いの先に訪れる血飛沫多量の銃撃戦は見ものだ。
タランティーノ印の水気の多すぎる、まるでトマトが破裂したようなまさに血の海の惨劇でショッキングの映像であるに違いないのに特に何もグロさも感じない、段々と感性が鈍くなってくるのがタラ映画の凄いところだ笑。

マンディンゴの存在などの歴史的な正確さは曖昧な点もあるが、当時の黒人が白人も劣っているという考えが当たり前に流行していた風潮の中で黒人奴隷の出自であったジャンゴが白人を一網打尽にするという「ありえなさ」が映画的な面白さを引き出しているようであまり日本人に馴染みのある話ではないかもしれない。
しかし終盤20分のジャンゴの無双劇は笑ってしまうほど爽快だったし、大爆発した屋敷を目の前にして笑う彼は最高にクールでまさにヒーローそのものに見えた。
触れてはいけないタブーとも言える歴史を見事エンタメに昇華させたタランティーノ監督の悪趣味ながらも素晴らしい手腕に感服笑。

オレ