劇場公開日 2012年10月6日

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「「もしも」のために、ハンカチ必携」新しい靴を買わなくちゃ ダックス奮闘{ふんとう}さんの映画レビュー(感想・評価)

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5.0「もしも」のために、ハンカチ必携

2012年10月6日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

興奮

幸せ

「ハルフウェイ」の北川悦吏子が、撮影監督に岩井俊二、主演に中井美穂、向井理を迎えて描く、ロマンティックラブストーリー。

何はともあれ、本作を鑑賞しようかと考えておられる皆様、とりわけ、愛する恋人と映画館へ向かおうとされている方へ、じゃあ、ひとつ提案。

ハンカチ、あるいはティッシュ、持って行った方が良いか、と。

美と芸術の都、フランス、パリ。フリーのライターとしてパリで生計を立てる美しき女性と、日本で「それなりに」成功したカメラマンの男性。二人が偶然に出会う事から始まる、3日間のラブストーリー。

ともすれば、恋愛の上辺だけをすくい上げた陳腐な恋愛コメディの様相を見せる本作。多くの観客は、恋愛ドラマの一時代を築いたともいえる女優、中山美穂と、現代日本映画界をけん引する若手のホープ、向井理の美しさを目当てに作品と向き合おうとするだろう。

だが、この作品、巷に溢れる「役者アップで許してね、テヘ」風味のお手軽ラブストーリーとはどうも、違う。何が違う?どこが、違う?

「熱」が、違う。

余りに美しすぎる、向井、桐谷兄妹のカットから始まる物語は、実のところ登場人物はほぼ4人のみという極めてミニマムな構成。その中で、遠景の沈黙を拒絶するように、何気ない会話を細かく、細かく、積み重ねていく。

これが熱く、さりげなく、華麗に卑猥だ。

パリという特別な空間で、互いの存在を引き寄せ、時に突き離し、じりじりとにじりよっていく男と、女。洒落、孤独、疑惑。言葉の魔術師、北川の手に掛かった台詞は一音、一音が熱を帯び、劇場の温度計を駆け上がる。熱く、むせ返るような恋愛の、人間の不埒な世界。

そのマジックに染められた言葉を吐き出すのが、現代日本映画界で高い注目を集める向井、桐谷、綾野なのだから、時代が産み落とした熱力に支えられた言葉はさらに沸点へと爆走する。

あるべき音を、あるべき場所で挿し込んでくる坂本龍一の円熟したスコア。岩井の妖艶なカメラワークにも助けられ、不埒な劇場は最高温度へ。観客は夢のような熱の幻惑へと迷い込む。まさにそれは、恋に浮かれた感情の如し。怖く、痛く、気持ち良い。

と、いうわけで劇場の温度を、そして貴方の体温を間違いなく3度、4度平気で押し上げる熱情が、演出、カメラ、音楽、あらゆる分野において詰め込まれた魅力・・いや、むしろ近年稀な芸術の持つ暴力性すら醸し出す作品。気を付けないと、劇場で鼻血をだす羽目になること請け合いである。愛する彼氏、彼女にはあまり見せたくない失態である。おお、怖い、怖い。

さて、改めて。ティッシュ、あるいはハンカチをお忘れなきよう。

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ダックス奮闘{ふんとう}
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