劇場公開日 2012年8月4日

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「ミンスを忘れない」トガニ 幼き瞳の告発 クリストフさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5ミンスを忘れない

2019年9月9日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

泣ける

悲しい

興奮

泣ける映画はいくらでもありますが、
これも紛う事なき泣ける映画ですが、涙の種類が違います。
「悔し涙」がこれほど出る映画は初めてかも。
話は悲惨で救い用無く、結末は不条理。
イノは正義の元に告発し、被害者の子ども達に、
「加害者に罰を与える、必ず」と約束したのに、
果たされないのは強者の論理。既得権益の勝利。

イノの母が彼に告げた言葉、
「みんな善悪が分からない訳じゃないんだ。」
善悪が分かっていても、守られるのは圧倒的多数。
これぞ民主主義。大人ってホント生きるためには汚い。
弟も犠牲になったミンスが、
イノに泣いて訴えたシーンは「悔し涙」てんこ盛り。

しかし、そのイノが母に言い返すシーン、
「今この(被害者の)手を放したら、立派な父親になれる自信がない」
これ素晴らしい。よく言った。そして濡れた。
例え結果は、勧善懲悪とはいかないまでも、
被害者の子ども達には掛け替えのないモノを残した。
自分たちは社会的弱者だから泣き寝入りしかない、
そう思っていた彼らが、希望を持つことを覚えた。
そう信じたい。信じないとやるせない。

韓国では、障がい者に対する扱いが殊更非道いと聞いたことがある。
だからこそ、こういった聾唖学校を経営することは
社会的に尊敬され、キリスト教徒にも賞賛を浴びる。
誰でも出来ることでは無いからこそ、つけ上がるようになり、
性的虐待まで至ったのかなとも思うと、
別にこの事件は特殊な人間の事件ではなく、
誰の心にもある隙間がたまたま大きくなっただけかもしれない。

「この子の名前はミンスといいます。忘れないで下さい!」

クリストフ