劇場公開日 2012年4月14日

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オレンジと太陽 : インタビュー

2012年4月13日更新

ケン・ローチ息子が長編監督デビュー「父親は父親でしかない」

1970年代まで、労働者として13万人以上の孤児をオーストラリアなどの英連邦諸国に不当に送り込んでいたという、英国政府最大のスキャンダル“児童移民制度”に鋭く切り込んだ意欲作「オレンジと太陽」(4月14日公開)。本作で長編監督デビューを果たした新鋭ジム・ローチは、イギリスの巨匠ケン・ローチの実の息子である。これまでドラマの演出家として活躍してきたジム監督が、父親ゆずりの確かな手腕で知られざるイギリスの黒歴史を暴く。(取材・文・写真/山崎佐保子)

児童移民の実態を知り、社会に告発し続けた女性社会福祉士マーガレット・ハンフリーズの著書「からのゆりかご 大英帝国の迷い子たち」の映画化。自分の生活を犠牲にしながらも、1組でも多くの家族を結びつけようと奮闘したマーガレットの半生を描く。「奇跡の海」「戦火の馬」など確かな演技力を誇るエミリー・ワトソンがマーガレット役を熱演した。

実在の人物であるマーガレットに強くインスパイアされたというジム監督は、「2002年に新聞で小さな記事を見たのがきっかけだった。児童移民の問題を描くにあたり、当事者の目線という手法もあったと思う。だけど僕はあえてマーガレットの視点で描くことを選んだ。それは映画には心、ヒーロー的存在が必要だと思ったから。マーガレットの存在は多くの人を勇気づけたし、強いインパクトを残した。彼女自身がヒーローのような存在だからね」と敬意を表す。また、「マーガレットが同時に普通の人でもあったことにも心を動かされた。子を持つ母でありながら自分の子どもをイギリスに残して他の家の子どもを助けないといけない。果敢な活動のため代償を払わないといけない、そういうジレンマを抱えている。そういう皮肉も大事な要素だったんだ。」と意図を明かした。

巨匠を父にもつジム監督にとって、映画監督への道を選ぶのには相当なプレッシャーがあったという。「実は、僕は絶対に映画を作らないという覚悟を決めていた。映画監督だけにはならないぞって(笑)。映画を撮ろうと思うと具合が悪くなるほどプレッシャーがあったし、失敗すれば殺されるんじゃないかってくらい厳しい批判を受けると思ったからね。だけど、年を重ねて考え方が変わってきたんだ。自分自身がやりたいことをやらなきゃって。もう作っちゃったから、できるだけ自分のことが書かれた新聞や雑誌の記事などは見ないようにしているよ」と笑い飛ばした。

それでは、父のケンは息子の作品をどう見たのか。「気に入ってくれたみたいだよ。僕が父の編集にも口出ししてもいいって条件付きで契約書にサインしてもらって、僕の編集室に入れてあげたんだ(笑)。というのは冗談で、良い提案やアイデアをくれたよ。映画監督としてというよりは、父親だからごく自然なことだけどね」と固い絆で結ばれていた。そして、「父に限らず、両親のことは誇りに思うよ。子どもの頃はまさかケン・ローチが自分の父親だと思ってなかったよ(笑)。父親は父親でしかない。誰にとっても両親の存在は大きなもの。たとえ離れていようと、いつもそばにいるようにインスピレーションを受けているよ」と語った。

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