劇場公開日 2012年8月11日

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「クセになる」桐島、部活やめるってよ 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5クセになる

2013年2月18日
フィーチャーフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

笑える

悲しい

知的

部活に打ち込む青春や熱い友情、ときめくような純愛と死別という悲恋、ヤンキー同士の抗争…この映画では、学園モノの定番は一切描かれない。大きな出来事も起こらない。
いや、出来事は起きた。
学校一の人気者、バレー部のエース、桐島が部活を辞めたらしい。
一見何でもない事かもしれないが、皆様も学生時代を振り返ってほしい。
「○○と○○が付き合ってるんだってよ」「○○、フラれたらしいぞ」…
些細な事が出来事だったハズ。
ましてや人気者の突然の噂など重大ニュース。
瞬く間に学校中を駆け巡り、生徒たちの間で波紋を呼ぶ。
特に動揺を隠せないのは、桐島に近い面々。桐島と同じバレー部、桐島の彼女とその仲良しグループ。
桐島が部活を辞めた理由もハッキリせず、連絡も取れず、モヤモヤし、日に日に苛立ちが募る。
一方で、無関心な面々も。クラスでキモがられている映画部の男子、片思いの男子をこっそり見つめる吹奏楽部の女子。
この温度差、経験あった。
目立つグループと目立たないグループ、あったあった。
目立つ“上位”グループは我が物顔で君臨し、コソコソ陰口叩き、目立たない“下位”グループは空気のような存在で、クスクス嘲笑される。
学校という名の窮屈なピラミッド階級(ヒエラルキー)は、生徒たちにとっては格差激しい現実の社会そのものなのだ。

吉田大八監督の演出が素晴らしい。
ある一日の出来事を複数の視点から描いてパズルのように繋がり、各々の描写を細やかに積み重ね、それぞれの感情が交錯するクライマックスまで見せきる。
ヒリヒリとした空気、虚無感、不穏な雰囲気、一筋縄ではいかない緊張感は緩む事ない。
上位グループのムカつく態度、下位グループのひがみっぷり、こそばゆい感じ、絶妙な間合いも浮き彫りにしている。
所々挿入される通な映画ネタにニヤリ。
神木隆之介、大後寿々花が巧い。
橋本愛のクールキューティーな魅力も際立っている。
若手俳優たちの見事なアンサンブル。中でも東出昌大が印象に残る。

確かにクセになる映画。
アナタはどのグループに属していた?
一度見たら、また別の視点から見たくなる。
学校という小さな社会で蠢く色々な顔が見えてくる。

ちなみに僕は下位グループだったなぁ…(笑)

近大
CBさんのコメント
2022年12月30日

いいレビューですねー。俺もまさにそういう感じの映画として観ました。そして原作もまたそういう感じで読みました。
本作から立ち昇る高校時代の匂い!
恩田陸「夜のピクニック」と並び立つ、青春小説の傑作と思います。

CB
グレシャムの法則さんのコメント
2020年5月22日

コメントありがとうございます。
この前、ポテチで松岡さんの脱皮前の感じを観たばかりだったのですが、ポテチのすぐ後の桐島、だったとしたら、短期間での演技派への成長ぶり凄いですね。(出演時間が違うとはいえ)

グレシャムの法則