劇場公開日 2012年1月7日

「原作の良さは生かせず」白夜行 白い闇の中を歩く まりぽっささんの映画レビュー(感想・評価)

2.5原作の良さは生かせず

2021年3月24日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

※原作小説既読
※ドラマ版視聴済(2006年放送)

ぶっちゃけドラマ版を観る前までは『白夜行』を映像作品にするなんて、小説の持つ雰囲気が損なわれるのではないかと思っていたので、ドラマ版の仕上がりには正直驚いたしお陰で映画版を躊躇わずに視聴する気になった。

原作ではあくまで主役の二人は他者の視点から「限りなく黒に近いグレー」で当事者の心理描写は一切無く、故に二人の間にある関係(絆なのか愛なのか贖罪なのか打算なのか)は誰にも判らないし、だからこそ際立つ雪穂や亮司の「妖しさ」「際どさ」の世界観が描かれるが、二人の心の在り方だけでなくこの描かれた世界観も含めてすなわち「白夜行」なわけだけど、全てが可視化される映像作品は、この辺りをどう描写するか役者がどう演じるかによって観る側に与える印象が大きく変わるのだなということを本作を観て改めて思った次第。

例えばドラマ版ではあえて「二人の間には愛があった」という解釈で描いてはいるが、打算的で冷淡な雪穂の人間性が一貫して描かれていたため説得力があった。
本作も同様に二人の間には愛があって、やがて訪れる「温かい」日だけを信じ一日一日過ごしているという点では同じだが、計画的に母を殺害しえたミホ(雪穂)にしてはいちいち心が揺れ過ぎてて「普通の女」感が拭えない。ヨハン(亮司)一人が白夜を行くようで、結果「成就しない悲しい恋物語」な仕上がり。

まりぽっさ