劇場公開日 2012年6月23日

「実話に制約されたストーリーだけど、犬にされるままの香取の本気度が好感。」LOVE まさお君が行く! 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5実話に制約されたストーリーだけど、犬にされるままの香取の本気度が好感。

2012年5月22日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 監督が「ジーンワルツ」の大谷健太郎。そして脚本が「ソラニン」の高橋泉が組んでもストーリー的には、ほぼ想定内の内容。元ネタがテレビの人気コーナーの実話なので。最初から筋が決まっている話だけに、どんなに実力のあるクリエーターコンビでも、やりようがないというところ。

 それでも、まさお君がロケ先で暴れ回り、負けず劣らず相棒の手芸人・松本がぼけぶりを発揮するドタバタは天下一品。ラストの結婚式場での息も切らせぬハチャメチャぶりは、よくもここまでネタをつなげたものだと感心しました。おかげで試写会に参加していた子供たちはまさお君の「活躍」に大喜び。試写会終了後も大拍手で、満足感を表していました。だから普通に良い映画だったかというと、ちょっと表現に困りますけどねぇ~。

 まぁ、それだけだと大谷監督に申し訳ないので、意外に泣けてくる名場面もラストに登場します。

 松本がお笑いライブに、まさお君人気のおかげで初出場したとき、ネタで語るまさお君との旅の思いで話がいいんですね。そこにまさお君の臨終が被ると余計に感傷的になり得ます。
 それまでバカ犬としか思えなかったまさお君の行状の意味がガラリと変わってしまうんです。
 例えば、松本の部屋にあった人形を加えて、遁走してしまったのは、得たいの知れない「魔物」から松本を守ろうとした行為だったのです。現物のまさお君も大きな恐竜型のロボットから松本を守ろうしたエピソードが残されており、意外と彼なりの主人思いの一面もあったようなのです。松本のネタを聞くにつけて、あの時のバカ騒ぎは、まさお君にとって松本をなんとか守りたいという一念からの行動だっかと気付かされて、ちょっとウるっと来てしまいました。

 本作で売れない芸人松本を演じたのは、香取慎吾。ちなみに松本秀樹本人も友情出演しているようだったのですが、見落としてしまいました。香取のオーバーアクション気味な演技は、売れない芸人役にピッタリ。まさお君とのダメダメコンビの呼吸もピッタリでした。
 何しろまさお君役のラブラドールも本気モード。香取を見つけては、本気で突進してマウントしてきます。大型犬だけに、突進してこられるとちょっと怖かったでしょう。そして、大きな舌で顔中をベロベロと舐められてしまいます。
 そんなまさお君役に全く臆するところなく香取は、されるままになっていました。役になりきるとはいえ、香取の本気度が伝わってくる好演なのです。やっぱり前作こけましたから、ここは一番主役として踏ん張りどころでしょうか。
 それに比べて、ちょっと冴えないのが、松本の恋人須永里美役の広末涼子。売れない芸人を支える恋人役として、ちょっと説得力がありません。『おくりびと』で見せた、台詞がなくとも気持ちがクグッと伝わってくる演技と比べて、「それなり感」を感じてしまいました。

 ところで、リアルまさお君は本当に凄い天然ボケだったようです。しかも食いしん坊でドジだが好奇心旺盛。そんな彼の持ち味は、充分発揮されていました。やっぱり犬に振り回されるほど大谷監督の演出力はヤワではありません。
 ちなみにバカ犬と思われている反面、賢い一面もあり、撮影本番時か否かを理解していた様子を窺わせることがしばしばあったそうです。本番の時はテンションがまるで異なっていたというから、人気者になるための素質があったようなのですね。

 まさお君の好みの異性のタイプは、なぜか黒ラブのメスでした。それは本編でも反映されています。これはごく幼い頃に黒ラブに囲まれて生活していたことによるものだそうです。
実際に黒ラブのメスに会うたびに猛アタックをかけそうですが、毎回嫌われてしまっていたのが実情のようです。このため番組で黒ラブのお嫁さんを公募し、3匹とのお見合いの末、ようやくダイアンと相思相愛で結ばれたのが本当のお話でした。

 最後に大切なことを告知します。
 テロップ終了後にも、松本の部屋のシーンが登場します。里美がひとりで部屋の入り口に張り紙を出します。そこには、「松本はいまだいすけ君と旅に出ています。」と書かれていました。映画のヒット次第では、今度2代目旅犬だいすけ君との旅が描かれる続編が登場するのかもしれません。割と実話に忠実に描かれた本編は、テレビ東京『ポチたま』ファンには必見ですね。

流山の小地蔵