劇場公開日 2012年4月7日

  • 予告編を見る

「 サイレントムービー全盛期に活躍した大スターが、トーキーの時代へと...」アーティスト kossykossyさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0 サイレントムービー全盛期に活躍した大スターが、トーキーの時代へと...

2018年10月30日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

 サイレントムービー全盛期に活躍した大スターが、トーキーの時代へと変貌を遂げる時、落ちぶれてゆく姿。どこか見たことがあるストーリー。

 もともとジョージ(デュジャルダン)の大ファンであったペピー(ベジョ)は試写会のあとに、ひょんなことから彼に抱きついてしまう。“Who's that girl?”と見出しに書かれた新聞。やがて彼女はエキストラとしてジョージの主演作に参加し、ダンスシーンを何度も撮り直しする。終わった後に、女優として成功するにはもっと目立ったほうがいいとアドバイスして、つけぼくろをつけるのだ。やがて、その美貌によりスターダムにのし上がったペピー。ずっとつけぼくろを点けたまま主演作を撮りつづける。しかも“Beauty Spot”(つけぼくろ)というタイトルの映画もキーポイントとなった。

 ジョージの契約していた映画会社Kinofilmもサイレントを打ち切り、妻からも離縁され、運転手クリフトン(ジェームズ・クロムウェル)も解雇。財産もオークションにかけてしまう。そして、自宅でフィルムを燃やし、危うく焼死しそうになるところを愛犬アギーが助けてくれた。ペピーは彼を自宅で休ませ、次回作はジョージと共演したいとプロデューサーにかけよるのだ。しかし、ベッドから起き出したジョージは脚本を投げ捨てて戸惑うばかり。彼女の部屋でオークションで売ってしまった自分の家具や財産を見つけ、自殺を決意。寸でのところで、自殺から救うが、台詞を喋らすよりもダンスで勝負だ!とばかり、タップダンスで復活する・・・

 なにしろ最初から無声なので、サイレントからトーキーへと移り変わる転換点をどう表現するのか楽しみにしていたところ、中盤にコップの音や女性の笑い声だけを挿入するという荒業だったが、これが面白い。夢の中で周りの音だけが聞こえ、自分が喋れないという設定にしたのだ。まぁ、ドラマではちゃんと会話しているので、声がおかしいことではない。そして、終盤には火事から助けてくれた警官の喋りを見て、何を言ってるのかわからないという精神状態。ここで、人間は喋れなくちゃわからないんだ!と、トーキー映画に出ることを決意したのか、もしくは気づくのが遅かったため自殺を決定的にしたのか・・・この二つのシーンがいい。

 最後には声が出てくるのだけど、どうもハッピーエンドへの過程が単純。まぁ、当時のハリウッド映画へのオマージュと思えば、すべて許せるんだけど、そこがずるいのかも(笑)

kossy