劇場公開日 2012年3月16日

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「サッチャーについて、他に描くべきことはいくらでもあるのでは」マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙 Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0サッチャーについて、他に描くべきことはいくらでもあるのでは

2015年4月13日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

難しい

総合55点 ( ストーリー:40点|キャスト:75点|演出:55点|ビジュアル:70点|音楽:70点 )

 英国病と言われた大英帝国の落日と経済の停滞・ビッグバンといわれた経済の大改革・労働争議・IRAの反政府活動との戦い・フォークランド紛争に加えて、閉鎖社会英国における初の女性首相としての険しい道のり等、彼女にまつわる話題は事欠かない。たくさんの困難にも負けずに大きな改革と前進を成し遂げたサッチャー首相を描く作品なので、そのような政治家としての半生を政治の裏側まで描くのかと期待していた。
 しかし、具体的な問題や歴史的な事柄が明確に出てくるのではなく、サッチャーという家庭人や個人としての細かなことや人柄に焦点があたっていたし、それも抽象的な演出が多くてわかり辛い。しかもそれは政治家を引退してからのことが中心になるし、時代が頻繁に前後するし、幻想と現実を行き来するのも分り辛さに拍車をかける。細切れで政治問題も出てくるが、時代の大きなうねりを作り上げた政治家としての活躍が大きく取り上げられることがなく、せっかくの有名政治家なのにただの一人の人物としての描き方に終始している。どんな問題が出てきて、それに対してどのような対策をとったのか、どんな目標をもってその達成のために何をしたのか、そのようなことが殆ど出てこない。選挙に落ちた、選挙に勝った、爆破事件があった、そんな歴史的事実を途中途中に放り込んでくるだけで、彼女がそれにどう動いていったかを省いている。
 メリル・ストリープの演技は良かったし、全体の質感は悪くない。でも映画一本使って描くことが、鉄の女と言われた彼女にも家庭があって歳をとってからは幻想や痴呆に悩まされていました、だけでは明らかに物足りない。監督が女性だから家庭生活に目がいったのかもしれないが、この偉大な政治家を取り上げるのならば、他に描くことはいくらでもあっただろう。

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Cape God