劇場公開日 2012年2月17日

  • 予告編を見る

「設定が秀逸」TIME タイム Minaさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5設定が秀逸

2018年10月2日
Androidアプリから投稿

「人間の成長が25歳で止まる」
「時間=通貨であり、それが自身の寿命である」

なんという設定だろうか。流石はアンドリュー・ニコル監督だ。私たちが当たり前に使っている時間が限られた資源に、そして私たちの寿命そのものになるなんて…
そんな未来世界に生まれなかったことに感謝しつつ、SFらしい非現実的な世界観でありながらどこかリアリティーのある作品を作り上げてくれた。

こういう世界で生活する人々は、時代の流れと悟り日々を暮らしているが、やはり必ず「自由」を求めようとしている。そんなディストピア的世界観だが、時間(寿命)が無くせかせかと物事を進めなくてはならず、非常にスピーディーに物語が進んでいき、観ているこちらも気持ちがどこか忙しない思いになりながら、最後まで楽しめる。DNA操作により、両親も自分自身も見た目年齢は同じ25歳のまま一生過ごすのだが、富裕層は何を言おう、不老不死を手に入れたのだ。これで貧富の差が具体的に現れた形だ。無茶をしなければ一生若いままで生活が出来る富裕層と、ほとんど一日だけの寿命であり、睡眠時間を削って働いている貧困層。貧困層の居住区はスラムと化しており、一週間でも時間を持っていれば直ぐにギャングに奪われて殺されてしまうという地獄の様な日々を過ごしているのである。
だが、富裕層も全員が不老不死を楽しんではおらず、皆心のどこかに虚無感を抱えているのが現状である。冒頭でスラム街にやって来た、寿命を100年持つ人物もその一人だ。彼は自ら命を断ってしまうが、本来悪の根本の様に描かれる富裕層の善良な心や苦悩も描かれているのも良い。

「ガタカ」の様な緻密な物語を観てみたかった気がするが、アクション、サスペンスなど、映像は地味だが十分に満足のいく作品だった。だが、出来ればキリアン・マーフィー演じる警官も仲間になって欲しかった。

Mina