劇場公開日 2013年3月8日

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オズ はじまりの戦い : インタビュー

2013年3月7日更新
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オズはサム・ライミの分身――ジェームズ・フランコが語る

「たとえ題材が『オズの魔法使い』でも、そこに笑いを持ち込むのはいかにもサム・ライミだと思う」と語るジェームズ・フランコ。新作「オズ はじまりの戦い」は、俳優として広く認知されるきっかけとなった「スパイダーマン」3部作のライミ監督との、久々の顔合わせとなった。俳優以外にも監督・小説家・教師とさまざまな肩書きを持つフランコが、ライミ監督の映画作りと自身の創作活動に対する心境の変化について語った。(取材・文/本間綾香 写真/本城典子)

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世界中で愛されている童話「オズの魔法使い」に登場する、偉大なる魔法使いオズはどのようにして生まれたのか。これまで謎に包まれていたオズの成長物語が、3Dでファンタジックかつコミカルに描かれる本作。主演したジェームズ・フランコはこの有名なキャラクターについて、監督サム・ライミの分身のようだと語る。

「この映画は、オズの心の旅路をしっかりと描くことが大切だった。オズの感情が弧を描くように遠くまで到達するために、物語の始めでは彼は欠点のある未熟な男として登場するんだ。サムにとって自叙伝的なところがあると思う。つまり、オズの旅=サムの旅でもあるんだ。若い頃のオズは女性にモテて野心もあり、成功を渇望している。それがさまざまな出会いや経験を通じて、成熟した人間になっていくんだ。これはサム自身がたどってきた歴史でもある気がしている」

「スパイダーマン」3部作以来久しぶりに入ったライミ監督の現場は、懐かしさと新鮮さが入り混じったエキサイティングな体験だった。フランコ自身も監督をするようになったことで、以前とは違った視点でライミ監督の仕事ぶりを観察することが出来たそうだ。

「サムが手がける作品はたいてい莫大な製作費の大作だ。だから、エフェクトやプロダクションデザイン、編集など関わる部署の数も多く、全員が同じイメージを共有しなければいけない。通常は絵コンテを描く監督が多いけれど、サムは全編をざっくり描いたビデオコンテを用意するんだ。こういうカットがほしいといった要望を、具体的に示すためにね」

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ライミ監督は他の人の意見にもオープンなため、変更することもよくあるが、とにかくその準備が素晴らしいのだとか。撮影前でもそのビデオコンテを見れば、完成する映画の雰囲気がよく伝わってくるという。

「これは自分が監督する上でとても勉強になったよ。自分にはサムに任されるほどの製作費はないけれど、同じアプローチで撮影することはできるし、実際にそのやり方を取り入れている。今、教えている映画学科(ニューヨーク大学大学院)の生徒たちにも、同じ製作過程を経験してもらっているよ」

平凡な生き方を拒み、未知なる冒険を求めていたオズの物語を掘りさげていくなかで、フランコはかつてカリフォルニア大学(UCLA)をドロップアウトし、ほとんど人と交流もせず自分の作品づくりに没頭していた頃を思い出したそうだ。

「まるで、1939年のオリジナル映画『オズの魔法使』に出てくるカカシのようだった。オズに知恵(脳みそ)を授けてもらうため旅に出るが、すでに持っているのだとオズから大学の卒業証書を渡され、カカシはそれを手にして初めて自信がもてた。それに今の自分も少し似ていると思う。若い頃は何者かになりたいと思い必死だったけれど、UCLAに復学して卒業証書をもらい、そのときに自分はすでにやりたいことに取り組んでいる、願望を達成していると気づいたんだ」

現在はずいぶんと肩の力が抜けた。そして、何かを証明しなければという焦燥感もない。「今回のような素晴らしい作品に取り組む機会が与えられたことを純粋に喜べるし、自分のことばかりに意識を巡らせず、教える立場にもなったことで他人をケアする余裕ができた気がするよ」

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