劇場公開日 2012年7月14日

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「一番の見どころはエンドロール後」シャーク・ナイト 因果さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0一番の見どころはエンドロール後

2023年1月22日
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最後まで楽しく見られるサメ映画だった。もっとも、サメ映画という特殊なカテゴリにおいては最後まで楽しく見られることは必ずしもサメ映画として優れていることを意味しないのだが…

都会のプチブル大学生に見当違いのルサンチマンを拗らせた田舎の男たちが、塩水湖に多種多様なサメを放って大学生たちを襲わせるという筋書きは単純だが面白い。人間vsサメのレイヤーと人間vs人間のレイヤーが絶えず相互嵌入しながら物語を引っ掻き回す感じもサメ映画!という感じで好感が持てた。が、それだけ。欲を言えばもう一捻りあればよかったなあと思う。

なぜ俺がわざわざ面白い見込みのないサメ映画をそこそこ体系的に見ているかといえば、それは既存のサメ映画との差異を目撃したいからだ。ただこの辺りは塩梅が難しく、サメの造形とかシチュエーションとかいった「設定」にこだわりすぎると物語の凡庸さが強調されてしまう。本作はまさにその典型だった。お行儀よく文法をなぞらないでもっと好き放題やってほしかった。

ただ、エンドロール後のラップパートに関してはかなりいいなと思った。全てが終幕した後で登場人物たちが自分たちの劇中での行動についてラップで言及するという試みは、絶えず過去の蓄積をメタ化することでジャンルの幅を広げてきたサメ映画(という映画ジャンル)のモードと一致する。作品の内側でテクストの提示とその批評まで完了させてしまうというのは他に類を見ないパターンだったので新鮮だった。

因果