劇場公開日 2012年6月9日

「駄作映画なのに、なぜか幸福感に包まれる。」映画 ホタルノヒカリ Y.Gさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0駄作映画なのに、なぜか幸福感に包まれる。

2016年5月4日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

まず第一に、この映画は「ドラマファン以外まるで無視!」で作られた作品です。
ここまで割り切って作る潔さは逆に凄い。

キャラの性格も関係性も過去のいきさつも、なんの説明もないまま、さりげない会話にドラマシリーズの出来事をちりばめ、ドラマ後の進化を描きます。
何の事件もなければ危機感もない、ドラマ知らないで見たら、見知らぬカップルの旅行を見させられるだけです笑
初めて見る人にも楽しませる作品を作ってこそ映画なので、この時点で映画としては終わっています。

そもそもドラマファン殆どの人が、最終回での映画告知に
「このドラマ映画にしちゃダメでしょー!(°□°;)」
という驚きと不安の気持ちになったはず…笑

とはいえ、やっぱりほたるとぶちょおが見たいんですよ。
普通ドラマって、あくまで見てる側は第三者というか、登場する人達と同じ立場や目線で見れるわけじゃないけど、現実とは違う世界観を楽しめることが醍醐味だったりするじゃないですか。

でもホタルノヒカリってドラマは、ほたるが嬉しいとこっちまで嬉しくて、傷ついたり後悔してるとこっちまで胸が苦しくなる。
視聴者がほたる達と同じ目線で感情移入させられ、自分ごとのように2人と一緒に一喜一憂しちゃうドラマだったんです。

でもこの映画で初めてホタルを見たら、ホタルはガサツでグウタラな変人でしかない。
「のだめ」と同じにしか見えないはず。
脚本家はシリーズ1のホタルを忘れちゃったのか。
ホタルは「干物女」であって、ドジで抜けてるから「アホ宮」であって、
「おバカ」でも「変人」でもないんだよー!!

本来のホタルとは、人一倍責任感があって、いつも一生懸命で、やな事をNoって言えない内気さもあって、でも誰かの為となると人目も気にせず全力で尽くすお節介さで、困ってる人無視できない正義感もある。

な、の、に。自分のためには一切がんばらない。
自分の事だとすべてがめんどう、努力はおろか悩む事もどうでも良くなる、ノーテンキで諦めも早いから「干物女」なんです。

自分の為だとがんばれない、人の為ならがんばれる。
でもホタル自身は自分を干物としか思ってないし、しかもポジティブに捉えてます。
実は、人の為・仕事の為なら夢中で面倒なことをがんばってる事を、本人は全然気付いていないんです。

でも、ぶちょおは知っている。
そういう頑張り屋ホタルを知っているから、仕事や人助けに夢中で、つい恋愛のこと、ぶちょおのことなんて後回しになっちゃうホタルの事を理解してあげているんです。

今回の映画は、そういう2人の見えない愛情の描き方が足りず、雑なストーリーで隠れてしまった気がしました。
部長も「ぼくちん」連発なやりすぎ演出で、今回甘えん坊おじさんでちょっとキモかったし…
花嫁ドレスを買っておいてくれたサプライズも、誘拐事件を心配する気持ちが感情移入しにくいために、ドラマの指輪程は感動できなかったな。

ただ、映画スタッフは、ホタルの世界観を壊したわけではありません。

松雪泰子を諭そうと必死になってるホタルを、見守りつつも行き過ぎそうな時は制止する部長、見えない愛情を凄く感じたし、2人の性格が繊細に行動に現れてる瞬間でした。

ホタルノヒカリというドラマは間違いなく傑作で、誰よりも好きなヒロインでした。綾瀬はるかという女優が大好きになりました。
映画はそんないい作品を作ったスタッフ&監督&キャストへの、ご褒美作品かな?
イタリアロケは楽しかったに違いない!

Y.G