劇場公開日 2023年10月27日

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「好きになれない」アンダーグラウンド(1995) モーパッサンさんの映画レビュー(感想・評価)

0.5好きになれない

2020年6月27日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

ぼくが好きになれない映画には、3つのタイプがある。
 第1は、リアリティの欠如から嘘っぽさを感じる映画。現実に起こらないことが起こるからこそ映画は面白いのだが、作り手が真剣なら嘘っぽさを感じる余裕がないはず。たとえば、大林宣彦監督の「野ゆき山ゆき海べゆき」は、セリフが棒読みであるにもかかわらず、独特の世界に引き込まれる。しかし、次から次へと「そんな馬鹿な」と思える場面が続くと、馬鹿馬鹿しくて見ていられなくなる。たとえば、「BRAVE HEARTS 海猿」がそう。嘘っぽさと臭い台詞についていけない。
 第2は、主人公の人物像が好きになれない映画。醜男でも軽薄でも犯罪者でもかまわないが、生理的に受け付けない人物像だと、見ていてイライラしてくる。
 第3は、作り手の意図がわからないか、共感できない映画。たとえば、武智鉄二監督の「白日夢」がそう。いくら歯科医が舞台とは言え、口の中をアップで延々と見せ続けるセンスについて行けない。
 「アンダーグラウンド」は、第2と第3に該当する。第二次世界大戦以降のユーゴスラビアの激動を描き、カンヌ映画祭でパルムドールを受賞したというので期待したが、冒頭から意味不明の連続だ。冒頭、主人公二人が泥酔して運転する車の後を、ブラスバンドが祝賀らしい曲を演奏しながら、走って追いかける。車と同じ速度で走り続けて、管楽器を演奏できるわけがない。そのうち、主人公が拳銃を取り出し、同乗者や楽隊に向かって乱射し始める。運良く誰もけがはしないが、この常軌を逸した振る舞いにまずカチンと来た。その後の場面でも、意味不明の行進の謎は説明されない。それどころか、次から次へと意味不明が続く。コメディに仕立てたいらしいが、戦争の悲惨な状況になじまない。ベニーニ監督の「ライフ・イズ・ビューティフル」では、ホロコーストとコメディというまさかの組合せが成功していたが、本作ではずっと違和感が続く。謎の楽隊は何度も登場し、悲惨な場面で祝賀曲を奏で続ける。作り手には申し訳ないが、半分ほど見たところで、見るに堪えなくなった。作品としての評価は諸兄に任せるとして、私は好きになれない。

モーパッサン