劇場公開日 2006年5月13日

「病気でも、愛に溢れて、家族の絆を再確認出来る暖かい目線の優しい作品です。」明日の記憶 Ryuu topiann(リュウとぴあん)さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5病気でも、愛に溢れて、家族の絆を再確認出来る暖かい目線の優しい作品です。

2011年8月18日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

泣ける

知的

渡辺謙が出演する「シャンハイ」が間もなく公開されるので、渡辺謙の初主演映画の「明日の記憶」を未だ観ていなかったので、この機会に観て見ようと2006年の作品であるが、DVDレンタルをしてみた。
この映画は、公開当時‘若年性アルツハイマー症’の患者の病症とその家族の姿を描いた作品と言う事で、かなり評判の高い作品であった事を記憶している。
その評判を裏切る事なく、本当に身につまされながらも、じっと見入ってしまう深い共感を得る事が出来る、素晴らしい作品であったと想う。
白血病で、長い闘病経験のある渡辺謙さん自身のプロデュース及び、初主演映画となったこの作品は、ここ数年の彼の作品の中でも、素晴らしい作品の一本として名を挙げても決して可笑しくない立派な作品であったと思う。
今後、高齢化が進む我が国に於いて、老人性アルツハイマー症の発病は、本人は勿論の事
その家族と言う個人レベルの問題では決して無く、広く社会の問題としてもこの病気の発症は極めて重大且つ、重症な諸問題の根本原因となりうる事から、社会の中で、この病気に付いての正しい理解が必要であると思うのだが、その点に於いても、この作品は真正面から、アルツハイマー症、しかも若年性のケースを取り上げて、深く向き合っているこの作品は、社会的にも非常に意味の有る素晴らしい作品だと思う。
自然の美しい景色と、音楽がこの映画の本来的に重く、暗くウエットに成りがちなテーマを上手く沈む事が無い様に盛り上げてくれていた様に感じる。
渡辺演じる佐伯の娘婿、伊東直也を坂口憲二が明るく演じているのも救いであった。
しかし何と言っても若年性アルツハイマー症と言う不治の病と共に生きる夫を支え続ける佐伯の妻、枝実子を演じた樋口可南子も文句無く素晴らしかったと思う。韓国映画の『私の頭の中の消しゴム』と言う様な、若い恋人同士の単なるお涙頂戴ラブストーリーでない、きっちりと銀婚式を迎える夫婦の愛の絆の物語であり、闘病を受け入れる新しい家族の再生の物語としても、重いテーマでありながら、観終わった後に清々しい感動の余韻を漂わせている本作は、是非未だ見ていない方には、お勧めの1本です。
この映画でも出てくる、長谷川式易知能評価スケールは、世界的にも多く試されている簡単な、HDS-Rと言う検査方法ですが、私なども、スラスラと簡単に答えられない個所が有り、「もしや?・・・」と一抹の不安に襲われそうになる、誰に取っても、決して他人事と笑って済まされない、明日は自分の事かも知れないこの問題についても、健康であるうちから、真剣に老後、そして万が一不幸にも、若年性アルツハイマー発病というその日を迎える事が無い様に、健康維持の為、そして或いは、両親や、祖父母の介護の予備知識としても是非この映画を見て欲しい。
現在でも、原因も、はっきりとせず、治療法も、確立されていないこの疾患については、間違った認識をされている方も少なくないのが現実であるから、人間、必ず老いと死は、やり過す事が出来ない、人生の一部であるので、転ばぬ先の杖として、是非この作品を参考にして、自分の未来を、そして、家族の在り方を今一度考察し直す一助として、この作品を見て頂けるなら、嬉しく思う、そう人生の時間を1分でも無駄にしない為にも!健康な今から、病気についても、日頃から、考えて、生きて行きましょう!そして、死ぬまで
映画を楽しめたら、こんなに嬉しい事は無い!!!

ryuu topiann