劇場公開日 2011年5月14日

コネコノキモチのレビュー・感想・評価

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2.5引っ張る力、期待大

2011年8月11日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

怖い

萌える

オムニバス映画「Jam Films2」にも作品を提供している高橋栄樹監督が、注目を集めるアイドルグループ「アイドリング!!!」の人気メンバーである遠藤舞を主演に迎えて描く、群像劇。

某公共放送局のドキュメンタリー番組における俳優、田口トモロヲのナレーションに心奪われていた。声を張り上げている訳では無いのに、一瞬で視聴者を番組空間へと惹きこむ引力、優しさ、そして暖かさ。訓練では身につかない独特の味わいを前面に押し出し、番組の高い人気を後押ししていた。声の魔力、とでもいうのか。ただただ、その可能性に魅了されていた。

なぜ、そんな話をするのかというのは後ほど語るとして、さて、本作の内容である。楽曲、個々のメンバーの活動が幅を広げつつあるアイドルグループ「アイドリング!!!」の中心メンバーを迎えて描かれた物語は、子猫と喪失感を抱えた一人の美少女の関わりを軸に、下町の人間模様と緩やかな繋がりをユーモアと浮遊感、幻想を散りばめて描き切る。

と、いう意図は理解できる。しかしながら、東京スカイツリーが見守る下町に暮らす人々は良くも悪くも現実離れした異邦人として強く描写されており、情緒溢れる人間関係として見守るのはいささか苦しいオカルト空間の如き気味悪さばかりが目に付き、作り手の目的が最後まで見えてこない。

加えて、本作の大きな魅力として機能するはずの可愛い、可愛い子猫マンチカンを活かしきれない弱さが絶望的である。コネコのキモチなんて到底分からない冒頭20分と後半若干の愛らしい描写だけの出演・・まさかのマンチカンが人間へと変貌。幻想的の一言では誤魔化せない観客騙し、詐欺ぎりぎりのコネコ映画がここにある。

その中で注目すべきは、主人公を演じた遠藤のナレーションの上手さである。物語を引っ張っていく役割を担う声の主役は、静かに、それでいて熱く、愛らしく、変態空間を必死に持ち上げていく暖かさを称えている。目も当てられない世界にあって、もう少し、もう少し見守ってやろうという大人な感情を芽生えさせる魅力は、今後の遠藤という女優への期待、注目を高めてくれる。

言うなれば、それだけ注目して聞いていれば良い作品であり、人情喜劇として評価するには余りに奇抜な演出が負に働いてしまった一例だろう。

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ダックス奮闘{ふんとう}