劇場公開日 1999年4月17日

「ブルーノ・ガンツ!」永遠と一日 kossykossyさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0ブルーノ・ガンツ!

2018年11月3日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

 中心となる構図からカメラを引いて、自然な足並みで多くの人が動く。映像としては懲りすぎとも思えるくらい、不思議な雰囲気が漂ってくる。

 信号で止まる車の窓を洗う難民たち、難民売買(?)と思える映像。台詞も説明もほとんどなされない不可思議な長回し映像に眠くなるが、心地よい。人身売買業者(?)から少年を売ってもらい、国境の地を目指すアレクサンドレだが、思うようにいかない。思い通りにならなかった認知症の母親、亡くした妻アンナ、そして未完成の詩や小説。旅立つには悔しいことが多すぎたのだ。そして、嫁いだ娘にひきとってもらえなかった愛犬を誰かの結婚式で誰か(誰?)に預ける。

 途中、妻や母の回想シーンを織り交ぜながら、理想の詩人をも登場させ、幼き少年にも教えようとする。そして別れ間際に飛び乗ったバスの幻想的な光景によって、人生を走馬灯のように感じさせるのだ。赤い旗を持った革命戦士のような若者、芸術論を語るが仲たがいしそうな恋人、そして音楽家、詩人・・・結局、人生の美しさを理解できずに旅立たねばならない無念さを秘め、虚しく帰途につくアレクサンドレ。ブルーノ・ガンツの虚ろな表情が心に沁みる。少年の会話も印象的。故郷では地雷が残り、親友だったセリムも溺死してしまった。

 妻の言葉「永遠と一日」が病院へ行くことを止めさせるが、果たしてこれでよかったのだろうか。妻の思い出はそうであろうが、彼にとっては永遠によそ者なのだから・・・

kossy