あしたのパスタはアルデンテのレビュー・感想・評価
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なにもはじまらない
本人たちには深刻だけど、回りは笑えるという状況から、面白くて切なくてジーンと来る話かと思いきや、終わりはなにも始まらない夢で、肩透かし。結局長男は次男に怒りをぶつけたままで、家族の絆がどうとかいう話でもなさそうだし、ただ流れるままではなくて、ちゃんと自分の人生つかもうというのはなんとなく感じるけどよくわからない。
おばあちゃんが最後に大好きな甘いものを食べて自殺するのは、イタリア流ユーモアなのかよくわからなくて、怖い。
ただずっと見飽きないのは、出演者と、背景の古い町並みがそれだけで絵になっていて、これがイタリアの強みだと思う。
カミングアウト問題
何となく気になるタイトルに惹かれて鑑賞。ところがパスタやイタリア料理の映画でもないし終始ゲイに悩む兄弟のお話でした。
カトリックの本山だからゲイに対する風当たりが強いのも頷ける、もっとも「薔薇の名前」のように司祭の少年愛事件などもあるのだから神を持ち出しても如何わしさが付きまとう、映画では唯一兄弟の秘密を知る理解者の祖母の若き頃の不義密通エピソードや父親の不倫までいれて愛の形に罪など無いのよと諭すのだが微妙。
総じてLGBTへの励まし映画かと思ったら、案の定フェルザン・オズペテク監督自身もカミングアウトしているし、友人の兄弟の実話に触発されて作ったものらしい。
古い世代の父親像なんてまさに典型的、ただ母親の使用人を見下す高慢さやご婦人方の醜聞好きには閉口する、色情ぎみの老婦人や風変りな美人実業家など女性の描き方に癖が強いのも監督の女性観なのだろうか・・。
原題のMine Vaganti(浮遊魚雷から派生して近づくと危ない人物を指すらしい)から転じてのこの邦題、見事に騙されました。ゲイの話としてもせめて「キンキーブーツ」のようにパスタ工場の再生物語であれば楽しめたのですがメッセージ性が強すぎて困惑です。
映画ならではの視点
同性愛映画ずきとして本作は公開時にチェックしてはいた。
だが、予告と邦題が興味をそそるどころか、観客の期待に応えない映画であることが確信されるものだった。
深夜テレビでの放映を観て、劇場に足を運ぶ値打ちはあったと感じた。
ステレオタイプに描かれる保守的な父親や、その父親に意見できない母親などに不自然さを感じたものの、そのプロットの面白さとそれの描き方が良かった。
自分の長年の秘密を家族に告白しようとした矢先に、兄が同様の秘密を告白してしまう。このことによって主人公は、もし自分が告白をしていたら、家族からどのような扱いを受け、家族がどんなふうに動揺するのかを客観的に経験することになる。
そのほとんどが事前の予想通りなのだが、自己に関する出来事ではなく、他者に関する情報となることで、主人公の行動は予定されていたものとは異なるものになる。
映画が得意とする表現を、奇をてらわずにきちんと映像にしている。
明日のパスタはアルデンテ
トンマーゾが秘密を隠しながら頑張る姿や、ゲイを全否定する父親、ゲイを受け入れてくれたお祖母ちゃんなど、それぞれの個性があって良いと思う。
人間誰しも何かしらの問題やコンプレックスを抱えてるんだなと思った。
ラストのお祖母ちゃんが語ってる部分など何か考えさせられる事もあった。
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