アレクサンドリア
劇場公開日 2011年3月5日
解説
オスカー女優のレイチェル・ワイズが、4世紀に実在した女性天文学者ヒュパティアを演じる伝記映画。「海を飛ぶ夢」(2005)のアレハンドロ・アメナーバル監督がメガホンをとる。舞台は激動のローマ帝国末期、エジプト・アレクサンドリア。明せきな頭脳をもった美しい女性天文学者ヒュパティアは、身分や立場にとらわれることなく、多くの弟子たちに熱心な講義を行っていた。しかし、科学を否定するキリスト教徒と学者たちの間で激しい対立が起こり、やがてその問題の矛先はヒュパティアに向けられてしまう。本国スペインでゴヤ賞7部門を受賞し、大ヒットを記録した。
2009年製作/127分/G/スペイン
原題:Agora
配給:ギャガ
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2020年12月16日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD
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史実をもとに、よくもまぁここまでの脚本を書けたなぁと感心せざるを得ない。
豪華なセットも完璧。
奴隷の目線も含めた、当時の宗教での殺し合いと、ある女性の生きざまを描いている。
他の神を、もしくは哲学を信じることは、それだけで死に値するのか。
神の名のもとに意味もなく殺しあう姿は、自分と他者はちがう、この神とその神は違う、という排他的な理由だけで、もはや野蛮人にしか見えなかった。
こうやって、多くの命も、歴史的価値のある本などが消えていったのだろう。
人の手によって。
素晴らしいアレクサンドリア図書館の破壊のシーンはおもわず涙が出た。
相手を変えて、終わることのない戦いの中、違うものを信じる者として、それでも一人の女性を愛する元奴隷の姿、人を愛する描写がすばらしかった。
叶うことのないだろう彼の愛を、いつの間にか応援している自分がいた。
3人の生徒たちの一長一短。最後まで彼女の愛をつらぬきとおしたのは・・・
まるで愛し合っているかのように抱き合う2人の後姿。
ラストがもう素晴らしい。
激動の時代に、愛する人を守ることができなかった。
去っていく彼はどこへ向かうのか。
愛する人を殺した神を彼はその以後、信じたのだろうか。
自らの命を絶つしかなかったかもしれない。
・・・とまで想像させる作りこみが素晴らしい。
この監督の他の作品を見たいと思った。
減点法の評価である自分に、この映画では減点すべきところが無かったので、
5とさせてもらった。
2020年5月20日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル
■今作で、堪能したい所
1.映画のスケール感の壮大さ
・リドリー・スコット監督か?と思った程の、西暦4世紀の人々(奴隷含む)の衣装、武具を含めた装飾品の数々。特に、アレクサンドリア図書館の内部の装飾の美しさには驚く。
2.キリスト教徒たちの描き方
・多神教徒、及び後半はユダヤ教徒をも殺戮する姿。キリスト教は”他者に対して、寛容な宗教ではなかったか?
キュリロスを筆頭に、キリスト教徒達の服装が基調が”黒”である部分も、当時の彼らの狂気性を漂わせている。
ーあれでは、現代の過激な一部の宗教を盲目的に信じ、他教徒を殺戮する人々と何ら変わらない・・。ー
3.美しき哲学者で天文学に日々深い考察を続けるヒュパティア(レイチェル・ワイズ)を慕う人々の姿。
・ダオス(マックス・ミンゲラ) 奴隷という身分だが、ヒュパティアは”奴隷”扱いせず、彼も思慕を募らせていく姿。後にキリスト教に改宗していく苦悩する姿も見応えがある。
ー誰が、最後までヒュパティアの身を案じ、想い続けたのか・・・。-
・オレステス(オスカー・アイザック) 同じく、ヒュパティアに師事するが・・”君はさあ、長官にまで、出世したんだから、愛する女をキチンと守れよ!”と心中、激しく突っ込みながら鑑賞。
ーそれにしても、”平たい顔族”から見ると、オスカー・アイザックはこういう役があっているなあ・・。髭、濃いなあ・・。-
・テオン アレクサンドリア図書館長でヒュパティアの父だが、キリスト教徒に襲撃、簒奪され負傷。亡くなるシーンは描かれないが、歴史に翻弄される学者を好演。
■ヒュパティアの最期
・ちょっとなあ・・。史実なんだけれども・・。切ないなあ。
テロップが出た時には、”美しき、レイチェル・ワイズに何してくれんだ!”と毒づいてしまった・・。
<アリストテレス、プトレマイオス、”回転円”、”楕円軌道”・・・。きちんと、ローマ帝国史(と、少しだけ天文学)を勉強しておいて良かった・・。大変面白かった作品。作品自体のスケール感の大きさに、お腹一杯である。
けれども、鑑賞後は可成り、寂しい・・。
”宗教って何だろう。”という事を考えてしまう作品でもある。>
2020年3月26日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル
天文学専攻ではないのでついていけない話もあり。
特に信仰してる宗教もないので神に対する気持ちも、、、。
古代の建築物と図書館の多数の絵巻に圧巻。
ストーリーが暗すぎて再度の視聴はないかも💦💦💦
2018年10月27日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル
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いきなりローマ時代の中に引きずり込まれるほど感覚が麻痺してしまいそうな映像。なにしろレイチェル・ワイズの女性像が古代の彫像のような雰囲気なのだ。そんな彼女は哲学者として功績を残し、集まった弟子たちに講義をする。コペルニクス、ガリレオ以前の天文学。星は決して落ちてこないが、物体は落下するという万有引力の法則をも解明しようとしているのだ。彼女に恋する男は奴隷のダオス(ミンゲラ)、弟子のオレステス(アイザック)など・・・
ダオスは奴隷の身分なので求愛はできないが、彼女の講義をしっかり聴いていてプトレマイオスの天球儀を作ったりして注目を集める。愚か者だと評されていたオレステスは公衆の面前で音楽を使いプロポーズするが、ヒュパティアは受け入れない。月経の血を沁み込ませた布を見せ、私には調和なんてないと答えたのだ。
キリスト教徒たちにアレクサンドリアのセラピスをはじめとする神々を侮辱されたとして、武器をもって報復しようとする偉いさんたち。その中には図書館長でもあるヒュパティアの父親テオンもいた。彼女は弟子たちに戦いに加わらぬよう説得する。弟子たちの中にもシュネシオス(ルパート・エヴァンス)などのクリスチャンがいたし、奴隷のダオスもキリスト教に傾倒していたのだ。暴動の際、「武器を取れ」と怒られた奴隷の一人が長老(?)を剣で殺してしまい、テオンも深手を負った。圧倒的な数に膨れ上がっていたキリスト教徒。戦いきれなくなったアレクサンドリアの民は図書館へと避難するのだ。
やがてローマ皇帝の使者がやってくる。ローマ皇帝はクリスチャンだ。反乱を起こしたアレクサンドリアンの罪は問わないが、神殿と図書館を破壊し、クリスチャンが所有することを求めたのだ。慌てたテオン、ヒュパティア、そして弟子たち。せめて重要な書物だけを運び出して自らの学問を守ろうとする。しかし、ダオスはキリスト教徒の群衆へと赴き、神々の石像を破壊し、なんと自分の作った天球儀まで壊してしまった・・・なにかに怒った目。奴隷制度への怒りなのか?その足でヒュパティアの元へ行き、彼女を力ずくで奪おうとするが、できない・・・ヒュパティアは彼の首枷をはずし、彼を奴隷から解放した。そして数年後、ローマは東西に分裂。アレクサンドリアはキリスト教徒たちの町へと変わった・・・ここまでが前半。
ほとんどの者がキリスト教に改宗し、今度はユダヤ教徒が新たな火種となっていた。共存はしていたものの小さないざこざが至る所で起こり、殺戮があちこちで繰り返された。そして主教キュリオス(サミ・サミール)がヒュパティアを魔女だと決めつけ、彼女を隔離する。女は従順であれ、男に教えを説くなかれ、などという理由でだ。それを神の言葉として全員にひざまずかせるのだ。今では長官となっていたオレステスだけがひざまずかなかった。しかし、キュリオスに対抗するにはキュリオスが力を持ちすぎていたのだ。
やがてヒュパティアが魔女裁判のように複数の教徒に連れていかれ、拷問を受けることになるが、自由民となっていたダオスは彼女に近づき、苦しむことのないように気絶させ、やがて信徒によって虐殺されるのだ。
レイチェル・ワイズはもちろんいいし、助演の2人が前半と後半では違った顔を見せてくれるのがとてもいい。特に愚か者と言われたオレステス!彼女に振られたにもかかわらず、依然崇拝していて、守りきれないことに苦悩する姿がいい。
これだけの力作がなぜアメリカで賞を取っていない?理由は簡単、狂信的なキリスト教徒への完全なる批判となっているからだ。神の言葉を受け入れない者は死に値する。信仰の押し付けに最後まで抗っていたヒュパティア。本当は単に学問に打ち込んでいただけなのだが、それに対しては女性蔑視という点で強引に処刑へと導いている。この事件の後、アリスタルコスが公言した地動説を唱える者は16世紀まで登場しないほど、科学を否定するキリスト教の強大さは凄まじかった。そして異教徒への迫害、宗教を盾とする戦争、どうして宗教のために人々が戦わねばならぬのだという理不尽さや虚しさをこの映画は教えてくれる。久しぶりにいい映画に出会えたけど、できれば映画館で観たかったなぁ。
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