平成ジレンマ

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平成ジレンマ

解説

1970年代末から80年代初めに訓練生の死亡や行方不明事件で世間を騒然とさせ、日本教育機関における体罰禁止のきっかけとなった「戸塚ヨットスクール」に焦点を当てたドキュメンタリー。戸塚ヨットスクールを取材エリアに持つ東海テレビが、事件当時からの長期取材を敢行。時代を象徴する事件を起こした「戸塚ヨットスクール」のその後の30年と、厳しい体罰が影を潜めた同校の現在を追い、現代社会が抱えるジレンマを浮かび上がらせていく。

2010年製作/98分/日本
配給:東海テレビ
劇場公開日:2011年2月5日

スタッフ・キャスト

監督
プロデューサー
阿武野勝彦
撮影
村田敦崇
編集
山本哲二
音楽
村井秀清
音楽プロデューサー
岡田こずえ
ナレーション
中村獅童
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(C)2010 東海テレビ放送

映画レビュー

4.0教育とは

2020年8月22日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

教育に体罰は「時には」必要だと思う。そして相手にもよる。

別にエリート進学校の小中学生に言うことを聞かないからと言って暴力を振るう必要はないと思うけれど、言うことを聞かないワンパク坊主には、言うことを聞かないと怖い、と思い知らせる意味で暴力は(もちろん程度にもよるが)必要だと思う。

この映画の中で暴力を振るわれていた生徒は、いわゆる社会不適合者だ。そんな人たちを更生させるために、会話だけで説得することができるだろうか。

ただただ、ひたすら甘やかされた育った高齢のニートに口で説いて社会復帰できるとは思えない。

教育を十把一絡げにしてマクロで語ることはできない。百人いたら百通りの教育が本来必要なのかもしれない。だけれど、そんな環境整えることは難しい。

戸塚校長はヨットの楽しさを伝えたくてこのスクールを開校したと言う。

決して暴力を振るいたくてスクールを始めたわけではないだろう。

一人の不登校者が立ち直ったことがきっかけで、いつしかこのスクールが社会不適合者の拠り所となり、彼らを立ち直らせる一つの手段として「暴力」が必要だったと理解したい。

戸塚校長は、誰よりも生徒のことを想い、なんとかしたい、という気持ちを持って接していたはずだ、と信じたい。

それは、亡くなった生徒について記者に語るとき、語気を強め涙ぐんでいる表情や自殺した子を思いやる姿から、戸塚校長の生徒に対する愛情と自分自身に対する悔しさが感じ取れたからだ。

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shin

4.0戸塚ヨットスクール

2019年10月31日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

戸塚宏は生徒に対する激しい体罰でメディアと権力者に狙われ、有罪で投獄されるが出所後もヨットスクールを続けていた。
組織を維持するために今は体罰厳禁としている。
入学希望者が後を絶たないのは痛いほどよくわかる。
体罰とイジメを排除して何が残ったのか、との問いかけには返す言葉がない。
引きこもり問題、親子の殺し合いなど、現実は悲惨。

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いやよセブン

4.5あの事件から、はや30年・・・・・・。

2011年9月8日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

知的

難しい

“戸塚ヨットスクール事件”

2010年5月に東海テレビで
放送され大反響を巻き起こした
ドキュメンタリーに未公開シーンを加えて映画化。

内容こそ、まったく違えど
今年、心を震わされた『劇場版 その街のこども』と
似たシチュエーションを感じ、東中野まで足を運んできました。

劇場は、意外と言ったら失礼かもしれませんが、
案外、若い人もいらっしゃいまして、4割くらいの入りでした。

☆彡     ☆彡

事件が起きてから
もう30年が過ぎてしまったことが、
あまりにも記憶が鮮明なため驚いてしまいました。

映画の中にも出てきますが、
逮捕をされた戸塚校長が腕にはめられた
手錠をテレビカメラに向かって見せつける場面。

子供心にも、
手錠や顔は、
おそらく刑事さんのものと思われる
薄汚れたジャンパーで隠しているもの、
それを決まりごとのように認識していましたので、
まるで逮捕されたことを誇るような姿勢が強烈に、
いまもなお、脳に記憶として刻み込まれております。

作中にも触れられていましたが、
“体罰”が消え、騒がれ始めたのも、
そういえば、ちょうど、その頃からでした。

わたしは、まだ体罰世代でして、
小学校の運動部や、小学校の先生に、
頭を小突かれたり、お尻をバットで叩かれたり、
他にも記憶から消えているだけで色々あったはずです。

ただ、今振り返っても、
必要だったとは言いませんが、
不必要だったかと問われると、
「はい」と答える自信はありません。

大人と子供って、
ボキャブラリーや解釈力に差がありますから、
言うだけではわからない部分があると思うんです。

これを、やったら、怒られる(叩かれる)

パブロフの犬ではありませんが、
条件反射的な意味合いも込めて、
必要な部分はあるのではないでしょうか。
ただし、そこには大人の子供に対する愛情がこもっているのが絶対条件。

子供も、そのときはわからなくても、
あとから「あぁ、そういうことで、怒ってたわけだ」とわかってくるものです。

今作、
非常に感心したのは、
製作側の意図が感じられないこと。

戸塚ヨットスクールというと、
マスコミに徹底的に叩かれたこともあり、
「体罰=悪の権化」的なイメージがありますが、
善悪どちらの立脚点に偏ることなく、非常に中立、
ある意味フェアなドキュメンタリーになっています。

学園再開後、
学校屋上から18歳の女性が
自殺をしてしまう不幸な事故があったのですが、
報道された表側だけでなく、自殺をするまでの日々、
そして葬儀の模様まで、カメラに収められています。

そこには、
メディアに映し出されていた
戸塚校長の姿はなく、生徒を愛し、
このようなことになってしまった社会を
悲しむ、1人の年老いた男性の姿が、おぼろげに映っていました。

☆彡     ☆彡

表の姿と本当の姿のギャップ。
愛知県つながりではありませんが、
何処となく、戸塚校長と落合監督の姿が重なりました。
落合監督のドキュメンタリーも作ってみたら面白いと思います。

現在は、戸塚ヨットスクールを再開する傍ら、
年間70回も全国に教育に関する講演に招かれています。

日本の教育は、何処へ向かおうとしているのか
真面目な先生が、他の先生に煙たがられる教育現場
小学校の教育が、人間教育の根幹。一番大事

先生と生徒の立場が逆転しているところもある
日本の教育を憂い「本当なら、こんなことはやりたくない」と
戸塚ヨットスクールを経営しながらも、戸塚ヨットスクールの
存在を否定する、そこに作品タイトルにもある、戸塚校長の“ジレンマ”を感じさせられました。

最後に1点だけ書かせてください。
「今作が興行的に成功をすると、他の地方局で製作されている、
優れたドキュメンタリーも、今作同様映画化され全国で陽の目を見る場が広がる」

劇場に貼られていたプロデューサーがインタビューで、
そのような意味でも、今作は大事です、と語られていたのも印象に残りました。

次回作は
四日市ぜんそくを取り上げた
ドキュメンタリーが決定済みだそうです。
こちらも、絶対に観に行こうと思います。

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septaka