劇場公開日 2010年12月18日

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ゴダール・ソシアリスム : 映画評論・批評

2010年12月14日更新

2010年12月18日よりTOHOシネマズシャンテにてロードショー

見る者を混沌たる世界へと引きずりこむ、暴力的な音響と光の氾濫するデジタル映像

今年80歳を迎えたゴダールの最新作は「お金は社会のもの」「水と同じ?」という挑発的なダイアローグで幕を開ける。序章は地中海を周遊する豪華客船上での複数の国籍を持つ男女の陰謀めいた動向のスケッチで、マノエル・ド・オリべイラの「永遠の語らい」を否応もなく想起させる。

しかし、(意表を突くエンディングが用意されていても)、西欧文明の栄光の歴史を、優雅に讃嘆をこめて謳い上げた最長老監督とは対照的に、ゴダールは、いきなり、<西欧の没落>をめぐって激しい呪詛の言葉を投げつけ、けたたましい暴力的な音響と光の氾濫するデジタル映像が、見る者を混沌たる世界へと引きずりこむのだ。

次章は「ウィークエンド」に出てきそうな辺鄙なフランスの田舎の選挙に立候補したある家族のエピソードで、ここだけ60年代ゴダールのタッチが垣間見える。例によって、登場人物たちの会話の大半は、文学作品の箴言の引用のようでもあり、現状の苦境とフランス革命があっけらかんと接合される。

60年代のゴダールは、<資本主義>のメタファーとしての<売春>を好んで描いたが、「映画史」以降の本作では、おびただしい映画の引用によって、ロシア革命、ファシズム、スペイン内戦、ホロコースト、占領下といった20世紀固有の悪夢のような事象を省察し、抉り出す。終章のオデッサ到着のシーンにおける「戦艦ポチョムキン」のあからさまな引用も、その断片性ゆえに異様なまでの衝迫力を感じさせた。

高崎俊夫

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