僕たちは世界を変えることができない。 But, We wanna build a school in Cambodia. : インタビュー

2011年9月21日更新
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松坂桃李、初めて尽くしがもたらした“感慨”

現役医学生の葉田甲太と友人たちが、カンボジアに学校を建てるため奮闘するノンフィクショ体験記を映画化した「僕たちは世界を変えることができない。 But, We wanna build a school in Cambodia.」。同作で、主演・向井理演じる葉田(コータ)とともに募金プロジェクトを立ち上げる仲間・本田役に抜擢された松坂桃李。2009年に、若手イケメン俳優の登竜門となっている戦隊シリーズ「侍戦隊シンケンジャー」シンケンレッド役で華々しく俳優デビューを飾り、今年は「アントキノイノチ」の公開が控えるなど、期待の若手俳優だ。今作を経て、「知りたいという好奇心を刺激され、行動することの大切さを知った」と、大きな成長をもたらした。(取材・文/新谷里映、写真/堀弥生)

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郵便局でたまたま目にした海外支援のパンプレットに心動かされ、150万円貯めてカンボジアに小学校を建てようと動き出すコータ。合コンで知り合い意気投合し、プロジェクトの仲間に入る青年が松坂演じる本田だ。茶髪でテンションが高く軽い感じのキャラクターだが、内心に熱いものを持っている。戦隊ヒーロー出身の松坂にとっては、そんな外見と中身にギャップのある本田を演じることは、ある意味で挑戦だった。

「裏表のない気持ちのいいヤツですよね。見た目は派手だけれど、やっていることは実は真面目で素直。この4人のなかで一番真面目かもしれない。今までやったことのない役、(自分とは)真逆の役だったので、オファーをもらったときはすごくうれしくて。こんな役、やったことない! とワクワクしたのを覚えています」

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自分自身と掛け離れているほど演じる面白さがあると言うが、「真逆」の本田を演じながら、そのワクワク感はどう変化していったのだろうか。本田という青年としてカンボジアを訪れ、本田として初めてのことを経験する、それはどんな感覚だったのだろう。

「本田を演じたことで、役者ってこうやっていろんな人に感動を伝える仕事なんだと再確認できたというか、もっと色々な役に挑戦していきたいなと思えたんですよね。カメラがあることを忘れるくらい自然体で演技ができたのも初めてだったし、なんだか不思議な感じでした。(試写を見た人からは)カンボジアでツールスレン博物館やキリング・フィールドを訪れたときの演技とか、素に近いよねと言われるんですが、決して素ではなくて、本田というフィルターを通している。けれど、あのシーンは演じていてもすごく辛くて、僕自身も本田と同じように衝撃を受けていて……。こういう歴史があったんだと知らされた瞬間でもありました」

実話をもとにした映画ではあるが、カンボジアでの撮影は、よりドキュメンタリーを意識して撮影。手持ちのカメラ、最小限のスタッフ、そして原作者の葉田氏を実際にガイドしたブティ氏が映画でもコータや本田たちの案内役として登場している。カンボジアという国に対して「それほど興味を持っていたわけではなかった」と言うが、人生初の海外体験となるカンボジアは、価値観を変えるほどの意味深い旅になった。

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「最初は、カンボジアで撮影? 水に気をつけなきゃいけないなという程度だったんです。それが実際に行ってみると、魅せられたというか。ツールスレンやキリング・フィールドでの暗く悲しい歴史がありつつも、世界遺産の美しいアンコールワットがあって、時間がゆっくりと流れている。時間に追われない生活がすごく心地よかったんですよね。何よりも子どもたちの笑顔が素敵だった。無尽蔵じゃないかと思うぐらい元気なんですよ。たった2週間ちょっとしかいなかったけれど、ものすごく長い期間いた気がするんです。そんな充実した日々を過ごして東京へ戻ってきて、お湯が出ることに感謝しました。ちゃんと出る! 濁ってない! って。今まで意識していなかったことを意識するようになった、それはやっぱり大きいですね」

また、苦楽をともにしたキャスト&スタッフとの絆も松坂の心を熱くさせた。向井、柄本佑、窪田正孝は「みなさん先輩なんですが、役柄のサークルメンバーというよりも、もっと深い……純粋な仲間になれた気がします」。友情を育んだからこそ、撮影最終日は特別な感動に包まれたと言う。

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「海外でのクランクアップって、なかなか経験できないもの。こんなに気持ちがいいものなのかと感動しました(笑)。何もさえぎるものがない道、見渡すかぎり広がる草原、雲ひとつない空の下でのクランクアップは、本当に気持ちよくて、みんなと抱き合ったときは、これで撮影が終わったという寂しさよりも達成感がありましたね。あんなに純粋に“おつかれさまでした”と言えたのは、初めてかもしれないです」

初めての海外、初めて挑戦する自分とギャップのある役どころ、初めての感動……初めてづくしだった今作は、「きっとこれからの自分の軸になる作品」だと言葉に力を込め、最後に茶目っ気たっぷりに“エンドロール”について喜びを語った。

「(試写の際に)エンドロールに自分の名前が出たときはすごく感動しました。あっ、オレの名前がゆっくり上がってきている! しかもいい感じの曲(RAM WIREの「歩み」)に乗って上がってきている! うわー!って感動で(笑)。そのときに初めて、自分はこの作品に出たんだという実感が湧いたんです。これを両親が見たらどう思うのかなとか思ったら……もううれしくて。もっと映画に出よう!と意欲が湧いてきました。そして、俳優という仕事についても、作品が持つメッセージを、役を通じて多くの人に伝える、ちゃんと伝えることが僕らの仕事なんだと、大事になことを気づかせてもらいました。だから、いろんな役に挑戦して、いろんな作品に出て、エンドロールに自分の名前を刻んでいきたいですね(笑)」

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