「オウム事件を思い出す」マイ・バック・ページ よしたださんの映画レビュー(感想・評価)

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劇場公開日 2011年5月28日
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オウム事件を思い出す

豊かで平和な社会では、このような独りよがりな若者たちが暴発する事件が、時折思い出したように起きるものである。この映画が題材にした事件から20年ほど経ったときに起きたのが「オウム真理教」による一連のテロ事件であった。映画の中の事件が川本三郎の実体験に基づくものだということを鑑賞後に知るまでは、作品のモチーフになったのはオウムの事件ではないかという確信に近い思いを抱いていた。
しかしこれは安保闘争が終わりに近づく頃の、事実を基にした新米記者の物語。
山下敦弘の作品を何本か観てきたが、この作品はその中でも重く暗いトーンとなっている。妻夫木聡や松山ケンイチといった当代の売れっ子俳優をメインに据えているが、このキャスティングを目当てに劇場へ足を運んだ観客の期待は裏切られたことだろう。
この裏切りは初めから意図されたものではないだろうか。
映画では学生運動を、やっている本人たちの「道楽」として描かれている。運動資金のために自分たちの計画のあることないことを自らマスコミにリークし、実際にやっていることは無責任なガキのやんちゃに過ぎないという突き放した眼差しでとらえている。特に、根拠のない自信満々の言動からうさん臭さを放出している松山が本当に不愉快な存在。このインチキ野郎の学生運動家が、妻夫木やほかの登場人物を裏切り、観客の期待を裏切っていくのである。
主人公が一人で映画館に入り観ているのは川島雄三の「洲崎パラダイス 赤信号」である。勝鬨橋の上で、三橋達也演ずるダメ男が新珠三千代に「こんな俺が嫌ならどこかへ行ってしまえ。」と開き直っている。おそらくこれまで何度も彼に失望させられてきた新珠は、今回もまた同じ結果になることを分かっていながら三橋とは離れられないのである。
いっぱしの革命家を目指していると大口をたたく松山に対して、うさん臭さを感じながらも、信じてみたいと思う妻夫木や、セクトの他のメンバーたち。ずさんな計画が結局は破たんすることが半ば分かっていながら、誰も彼を止めることができないこちら側の構図と、「洲崎」側の構図が重なる。

よしただ
さん / 2015年5月13日 / PCから投稿
  • 評価: 1.0
  • 印象:  怖い
  • 鑑賞方法:CS/BS/ケーブル
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