劇場公開日 2011年3月12日

SP 革命篇 : インタビュー

2011年3月8日更新
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さらに、笹本にとってクライマックスとなるのが、テロリストに占拠された衆議院本会議場に踏み込んでの狙撃シーン。パニック状態の中、議員席の上に跳び乗って続けざまに撃ち、ピンポイントで敵を仕留めていく元五輪候補の真骨頂だ。しかも、ハイスピードカメラでの撮影だったため、撃った瞬間にまばたきをしてはいけないなど、多くの制約があった。

「椅子の細い手すりに足をかけて登っていかなければいけなかったので、転んだら一大事。(ワイヤで)つり上げてやるかどうかというような話にもなりましたが、大丈夫と思って。アクション・チームの方からも『いけるよね』みたいな。でも、難しかったんですよ。歩幅を1歩間違えても、足の左右が逆になってもフォームが全然違ったりするので。すごく大変でしたけれど、気合でなんとかなりました(笑)」

今だからこそ笑顔で振り返ることができるが、一度に何発撃ったか、どのようにカットを割ったか記憶が鮮明でない部分もある。それだけ撮影に集中していた証拠だろう。流れるような動作で銃を構え、瞬時に狙いを定めて撃つ笹本の姿は、スローで見るとその優雅さ、美しさが際立つ。この二大アクションを乗り越えたことで、すっかりアクションに魅了された様子だ。

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「アクションは、やったらやった分だけ確実に成果が出る。その爽快感がすごくあったので、ぜひまたやってみたいと思います。もうちょっと、練習に時間をかけたかったというのはありますけれど。岡田くんが下積みから2年くらいかけて挑んだ作品だし、私も同じくらい、少なくとも1年くらいはきちんと練習して挑めたらなあと思ったので。次にいい話があったら、それくらい練習しようと思っています」

一方で、笹本が同僚の山本(松尾諭)に“厳しい”ツッコミを入れる掛け合いはコミカルで、「SP」の風物詩のひとつ。「革命篇」では、絶妙のタイミングで山本のメガネが吹っ飛ぶという“奇跡”も起きた。

「現場でも皆が楽しみにしていて、さらにいいものを求められている空気がありました。私もそのプレッシャーで、本気でたたかなきゃいけないってなりましたね。けっこう本気でたたいているので、松尾さんも相当痛いと思いますよ」

信頼関係ができ上がっているからこそ可能になった名(迷!?)シーンである。3年余にわたって築き上げた四係のチームワークの良さが凝縮されてもいる。それだけに、完結編と位置づけられた「革命篇」のクランクアップ時は、達成感とともに寂しさがこみ上げてきた。

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「私は(撮影終了時に)泣いたことはほとんどなかったんですが、ちょっと泣いちゃいました。実感はなかったんですけれどねえ。岡田くんのアップのときは、松尾さんとサプライズで行こうぜってなって、現場の近くで待機していたのに、事情があって帰らなければいけなくなってしまって。そこに立ち会えなかったのがすごく残念。もし、その場所にいられたら、また違う、終わったんだなという感じが皆と共有できたと思いますね」

それでも、出演者の撮影がすべて終わった数日後、実景の撮影でオールアップとなった現場を四係のメンバーが訪れ、波多野貴文監督を胴上げするというサプライズもあった。チームが一丸となっていたことを感じさせるほほ笑ましいエピソードだ。

寡黙だが情熱を内に秘め、SPとしての誇りを持ち続けた笹本。「野望篇」と「革命篇」をつなぐドラマ「革命前日」に、「笹本らしさが出て、すごく良かった」シーンがあり、まだまだその人物像は奥が深そうだが、真木にとっても笹本を演じきった「SP」は、女優人生にあらゆるものをもたらした記念碑的作品となった。

「いろいろな意味で特別な作品です。『SP』で私のことを知った方もたくさんいると思うし、笹本は本当に尊敬できる格好いい女性なので、そういう役を与えてもらえたのは役者としてすごくうれしい。これだけ(ひとつの役に)長く携わり、キャストやスタッフも皆がプロで、いいものを作りたいという思いが強い人ばかりが集まったことが実感できた、本当に幸せな現場でした」

「笹本をここで終わらせるのは悲しすぎるから、似たような女の人でもいい。寡黙な殺し屋みたいなものをやってみたい(笑)」と話す表情も真剣そのもの。それほど笹本に込めた思いの強さが伝わってくる。笹本のDNAを感じさせる、新たな真木の姿が見られるのは、そう遠いことではないかもしれない。

インタビュー3 ~波多野貴文監督が「SP」で目指したアクションの金字塔
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