劇場公開日 2010年2月13日

団地妻 昼下がりの情事(2010) : インタビュー

2010年2月12日更新

1971~88年の17年間で、1133本という膨大な作品群を生み落としてきた日活ロマンポルノが、22年という月日を経て「ロマンポルノRETURNS」として復活する。その記念すべき第1弾に選ばれたのが、「団地妻 昼下がりの情事」。39年前にロマンポルノ第1作として製作された「団地妻 昼下りの情事」の舞台となる団地はそのままに、現代的な新解釈を加味した意欲作に臨んだのが、劇団「東京乾電池」で活躍する女優の高尾祥子。惜しげもなくヌードを初披露した高尾が、ロマンポルノという異世界で何を感じ、得たのかに迫った。(取材・文:編集部、写真:堀弥生)

ロマンポルノへの偏見を払拭すべく臨んだ濡れ場

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■私にできるのかな……

「団地妻 昼下がりの情事」のメガホンをとったのは、ロマンポルノ出身の中原俊監督。舞台出身の女優を探していたときに“発掘”したのが高尾だった。「まじめな性格、あやしげな雰囲気にひかれた」と巨匠をうならせた高尾だが、自身の胸の内は不安でいっぱいだったという。

これまでに、「諌山節考」や「富嶽百景」「かずら」など映画出演の経験はあったものの「企画の大きさ、注目度の高さは何となく想像できたので、舞台でしか主役を演じたことのない私ができるのかな……ということに対して、すごく不安を感じていました。ただ、声をかけてくださった監督が、不安がる私を『何とかなるもんだから』と言って気持ちを落ち着かせてくれました」

真摯なまなざし
真摯なまなざし

■白川和子の代表作に挑戦

同作には、「団地妻 昼下りの情事」で一世を風靡した“ロマンポルノの女王”白川和子も特別出演している。白川は、向井寛監督の「女子寮」を皮切りに5年間で200本のピンク映画に出演し、ロマンポルノに転身。ここでも、わずか1年半の間に20本という驚異的なペースで出演を続けた。

「神代辰巳監督、曽根中生監督、田中登監督の作品などは、映画として面白いと思って見ていました。ただ、実際に自分が演じるとなったときに、技術というか見せ方は難しいと感じていました。だから、自分のできることとして、相手役の方(三浦誠己)との芝居で生まれるものを大切にしていこうと。お話(日常)が流れていかないと、濡れ場も成立しないと感じていました」

■新規ファン開拓へ極めて大きな役割

かつてロマンポルノといえば、若手監督たちの登竜門的な位置づけとしても大きな役割を果たしてきた。中原監督はもちろん、滝田洋二郎監督や森田芳光監督、金子修介監督らが巣立っていき、美保純、蟹江敬三、風間杜夫ら演技派俳優も飛躍のきっかけをつかんだ。今回の“復活”は、映画人・演劇人にとって間口が広がったと解釈することもできる。

ようやく緊張がほぐれてきた
ようやく緊張がほぐれてきた

そんななか、第1弾で主演に抜擢された高尾の果たす役割は極めて大きい。「同世代で業界以外の方々にとって、ロマンポルノに対する偏見ってあると思うんですよ。本当に本番行為が行われていると思っている人もいるくらいですから、そういう偏見がどんどんなくなって作品を見てもらえればいいなという願望はあります。これから作品が続いて、いろんな役者さんや監督さんが増えてくれれば、かつてたくさんの映画ファンが生まれたのと同じように、新たなファンも増えてくれるんじゃないかなと期待したいです」

高尾は劇中、はかなげな表情を浮かべながら、抑えようのない感情を浄水器の営業マンに身を委ねるという形で爆発させていった。しかし、注意深く質問を吟味し、ひとつひとつ言葉を選びながら慎重に答える姿にこそ、演劇界で培ってきた土壌を垣間見ることができた。

今回のロマンポルノ挑戦は、高尾の内面にも大きな変革をもたらしたようで「映画は舞台と違って映像として残ります。当たり前のことですが、たくさんのシーンが組み合わさって、ひとつの映画として成り立っていくことをつくづく感じました。登場人物の状態や流れを、台本を読んだ時点で把握して、作品づくりに臨める役者になれたらいいなと思います」

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