劇場公開日 2010年6月12日

「この困難な時代には自立して行く,強い,優しい女子力で行きましょう」FLOWERS フラワーズ まぼろし探偵さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0この困難な時代には自立して行く,強い,優しい女子力で行きましょう

2010年6月23日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

知的

幸せ

世界で初めて小惑星探査機8年振り帰還,
日本サッカーW杯で初めて勝利,
こんな時、映画は,いじめ,復讐,バイオレンスじゃないでしょう
【Flowers】で自立して行く,強い,優しい女子力で行きましょう。

 6人の女性の生い立ちを交叉に描き、時代時代のタイムスリップを通じて、6人の個々の人生から、
女性全体の生きざまを描くことに成功した。
昔の見合い結婚、自由恋愛の波と、男女雇用均等法などへ到る、現代社会をうまく表現できていて、
庶民の歴史t大河ドラマを見ている様で、共鳴し、共感するところが多かったですね。

病院で父親と広末との間の会話のシーンがとでも感動でした。
広末涼子が、母の決心を辿ったトラウマから立ち直り、明るく、前向きに生きる事を
決心した心理を抑制された演技で圧巻でした。

翠(田中麗奈)と河本(次長課長)が当時流行っていたトリス・バーの話:
 新入社員はトリス,
 若手はレッドかホワイト、
 次長課長は角瓶かオールド,
 部長はリザーブ、
 役員はローヤル、
思いだしましたネ。庶民の時代を。

 Huntingに外の世界に出掛けて行く男性世界の速さ、冷酷さに閉塞感が出て来た今、
家族を繋いで行く女性世界が、ゆったりした時の流れの中に、
普通の女性の普通の営みの方が、一人一人に時に激しいインパクトがあり、時に奥深い優しさで、
動いたり、立ち止まったりして,自らの小さな人生を自ら切り拓いて行き、次につないで行く
 久し振りの、 "い~い"映画でした。

 6人の女性の生き方が、それぞれの時代、時代と自然主義的風景を綺麗に調和させて、
謂わばそれぞれの時代を確認しながら、6人の人生を”クリップで撮って”行き、時代性を軸にして
女性の全体像を描いて行く、と言う、非常に印象的な映画でした。

 自分の辿ってきた経験、これから辿るであろう子供たちの経験に共感、共鳴 する様に、
節目、節目にさざなむ、そよ風の音が聞こえて来る様に、ゆったり描いている点本格派だと思います。
刺激、インパクト、どぎつさ だけでヒットしても人の心は掴めないから、、。

音楽的にはオリビア・ニュートンージョンの「そよ風の誘惑: Have you never been Mellow」は70年代の曲ですが、
2度の石油ショック、ローマクラブの資源・成長の限界で、世界が揺れ動いた時代背景に生まれた、
現代にも通じる応援歌として効果的にBGMしていた。

 文芸的分析として「罪と罰」”誰よりも自分をうまく欺せる者が、誰よりも楽しく暮らせるってわけですよ”とスウ゛ィドリガイノフが言う。
悪事をして、仕方ない、と自分を欺せる者。真面目に生きたい、でも俺は悪事が好きだ、と思えば楽しい。
反社会的な題材、映像のを取り上げるのは、社会的な意味があるから、と内なる良心を宥めるインパクト商業主義は
愛するドウーニャに銃を向けられた、そんな映画は、最後には自分でこめかみを撃つしかないだろうに、、、、

 そこで、バイオレンス、いじめ,復讐などは映画の観客が現実の社会はこんなに恐い、残酷なんだ、と教えて、
と要求するから、それを提供するんだ、と。
でも映画「Flowers」は真面目に、強く生きて行きたい、それぞれ問題を抱えるが自ら決断して、
幸せを掴み”次はあなたの番ですよ”と女性の力で家族をつないでいく、前向きに、
本来の人間の営みを語っている映画だと思っています。

こういう"い~い"映画がヒットする事が、この停滞した日本を元気に出来る、と思いますネ。

まぼろし探偵