劇場公開日 2010年7月3日

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「近視眼的な告発映画に思えます」ロストクライム 閃光 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)

1.5近視眼的な告発映画に思えます

2010年7月15日
フィーチャーフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

原作未読者の意見です。

いきなり気合の入りまくったオープニングタイトルから嫌な予感はしたが果たして、登場人物らのテンションや演出が終始空回り気味な映画になっているように思える。

渡辺大演じる主人公の刑事はなぜだか始終イライラしている。仕事のイライラを恋人にぶつけたり、ちょっと小馬鹿にされたくらいで烈火の如く怒り狂ったり、何をそんなに怒っているのかがまずよく理解できない。
職務に対する誇りの高さや、警察組織の理想と現実の落差みたいなものとかが劇中で示されれば納得できたかもしれないが、そんな描写はほぼ皆無だ。

奥田瑛二も『叩き上げの刑事』のステレオタイプに過ぎず、説明不足な描写や大袈裟な演技がますますその印象を助長して、まるで現実味のある人間に見えない。彼が仏壇の前で泣き崩れる感情的なシーンでもこちらの感情は少しも動かなかった。

その他のキャラも同様、やたらに感情的で説明不足だ。
なぜか長々と続く濡れ場シーンより(ていうか、なぜ皆脱ぎたがる?)、そっちに時間を割いて欲しかった。
いや、そもそもこの映画は主人公達の人物描写に重きを置いていないのかも知れない。

映画では三億円事件の真相をひた隠しにする警察上層部に主人公達が翻弄される姿に重きを置き、ひたすらに『権力者達は汚い。彼らの率いる警察に正義は無い!』と訴え続ける。だが、その訴えはどうにも一本調子だ。
全共闘メンバーが三億円事件に関わっていたという『真相』は面白いのに、犯人一味がどんな思いで犯行を思い立ったか、現代の彼らがどんな思いで生きてきたのかといった点には触れられない。三億円事件を『かつての反権力者達が起こした事件』と位置付けたのは、今も昔も変わらぬ権力者の腐敗を描きたいが為では無かったのか。

これは角川春樹の『笑う警官』でも感じた事だが、作り手は訴えたいテーマに対して近視眼的な所があるように思える。もっと一歩引いた視点で攻めないと、そして観客を引き付ける要素(サスペンスやエンタメ性)が無いと、訴える力には乏しいのではないかと。
連続殺人の犯人には驚いたし、夏八木勲の過去のシーンは悲壮だが感動的だし、ミステリやサスペンスとしてもっと面白くなった筈なのになぁと勿体無く思ったのも不満の理由のひとつだ。予告編で期待してたんだけどなあ。

……不満ばかりたらたらとスミマセン、主人公の刑事と同い年の若造の意見でした。

<2010/7/4鑑賞>

浮遊きびなご