劇場公開日 2010年5月22日

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「小林政広監督作品鑑賞4作目にて初の満点!!!」春との旅 septakaさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0小林政広監督作品鑑賞4作目にて初の満点!!!

2011年1月18日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

幸せ

『ワカラナイ』を
わかりやすくしたら
こんな感じになるのかなぁ
小林監督、わかりやすい映画も撮れるんですね(驚&苦笑)

〈 あなたの夢に潰された 〉
〈 人って自分のことしか考えられないの 〉

第一稿を作ってから足掛け9年。
ようやく完成。そして公開。これまで
観てきた3作は、この作品のためにあったのではないか、そんな気にさせられました。

話のわかりやすさだけでなく、
テンポのよさ、なによりも一番驚いたのは
音楽を多用していることと、その音楽が素晴らしいこと。

大好きな手持ちカメラの撮影も
春が仙台でホテルを探すシーンくらいと今回は極力封印。

なにか小林監督にとって一区切りといいますか、
一旦、映画人生でここまでの集大成を製作しました、それくらいの熱い思いが伝わってきました。

◇   ◇

「いつものことじゃん」

そう云われてしまえば反論できないのですが、
私、実はオープニングカットで早々に落涙していました。

仲代達矢さん、徳永えりさん
セリフを交えることなく、喧嘩をしつつ、
歩いたり、座ったり、座る距離を詰めたりする
(これがラストの伏線だったりする。この辺も
 巧いというか小林監督作品で、このような比較的
 わかりやすい技法を用いられた作品は初めて観た)。

このお互いの距離感、表情に
おふたりの関係のただならぬ
愛情の深さを感じてしまいまして
「これはスゴイ映画になるぞ!」と
スイッチが入り涙が頬をつたってしまいました。

◇   ◇

撮影は順撮り。
役者同士、あまり話さないように
小林監督からは指示が出されたそうです。

徳永えりさんに対しては一番厳しく
接したそうで、某シーンでは一切寝させず、
また撮影をしたにもかかわらず、そのシーンを
カットしたりして、彼女の張り詰めた佇まいを作りあげたそうです。

この辺りは、
『ワカラナイ』の主人公の男に対する演出と同じですね。

ワンシーンワンカットを基本に、
序盤に登場する大滝秀治さんと
相対するシーンなど、超望遠レンズで撮影をし、
役者さんからはキャメラが全く見えない状態で演技をしてもらった。

もうこの時点で、
小林監督が今作にどれだけの精魂を込めたのかがわかる気がしました。

◇   ◇

徳永えりさん。
某大手新聞のインタビュー記事によると
「自分自身も今作の春と同じような体験をしている」とのこと。

体験していることで演じやすかったのか
演じにくかったのかまでは触れられていませんでしたが、
『フラガール』『うた魂!』『ブラッディ・マンデイ』一番存在感があって良かったです。

最初から最後までガニ股だったのは、
そこにどんな演出意図が込められているのか
結局、最後までわかりませんでしたが、順撮りが
功を奏したのか、心の変化、揺らめき、といったものが痛いほど伝わってきました。

そんな中でも、その痛みが最高潮に達したのは、
香川照之さん vs 徳永えりさんのツーショット。

お互いの気持ちの痛さが、あまりにも強すぎて、涙が溢れない。

しかし「どうして許してくれなかったの!!」
徳永えりが泣き叫ぶ、このセリフで強すぎる痛みに
涙腺を破られてしまい、肩を震わせながら泣いてしまいました。

◇   ◇

血の繋がりのある愛
血の繋がりのない愛

家族を顧みず自分の夢だけを追い求めた祖父。
そんな祖父と孫娘との旅は、祖父の我侭から
始まったように見えましたが、愛する孫娘へ
祖父が贈る最期の授業、そのように映ったのは私だけでしょうか。

ラストシーン。

「春、ありがとうな・・・・・・」

我侭で好き勝手をしてきた
祖父に似つかわぬ言葉が、私の耳には、ハッキリと届いてきました。

☆彡     ☆彡

見たくて仕方のない映画だったので
事前に情報入りまくり期待もしまくりでしたが、
軽々とそのハードルを飛び越えてしまいました。

文句なしの5点です(笑顔&感涙)

septaka