劇場公開日 2010年6月5日

「偽善に満ちた少年保護法制に対する怒りをぶちまけた復讐劇」告白(2010) 徒然草枕さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0偽善に満ちた少年保護法制に対する怒りをぶちまけた復讐劇

2022年9月21日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

1 作品のテーマ=復讐
本作は娘を教え子の中学生に殺された女性教師が、およそあらゆる方法で犯人の生徒を追い詰め、徹底的に痛めつけていくという、恐ろしくも痛快な復讐劇である。いくら中学生だって、悪い奴は悪い。徹底的にいたぶってやるべきだ。そんな見る側の内心の声に、見事に応えてくれるのであるw

2 少年少女犯罪への見方について
少年少女による重大犯罪に対しては、かつては刑法の刑事責任年齢や少年法を盾に保護を第一に考え、犯罪の原因を究明して、それを取り除く社会的な施策を講ずるべきだとする議論が盛んだった。
いわく「何故人を殺してはいけないかが分からない少年少女がいる。彼らを生んだ原因こそ問題だ」、いわく「人を傷つけてはいけないことをしっかり教育すべきだ」…。
しかし、保護や教育だけで片付く問題ではない、少年法などは偽善に過ぎない――そんな疑問の声も拡大してきている。本作はそれを証明する産物だろう。

3 勧善懲悪の池井戸潤と復讐劇の湊かなえ
勧善懲悪と言えば、池井戸潤が代表者だろう。社会悪に貶められた人々の怒りや不満を、最後に善を勝利させることで爆発させてくれる現代の水戸黄門シリーズが池井戸作品である。
ところがいかんせん、彼の作品には公式に認められた、誰が見ても悪いこと、いわば表面的な悪の定型しか登場しない。少年犯罪のような、「悪」かどうか議論の余地あるものは登場してこないし、懲悪も過剰なものは控えた、お利口な懲悪wどまりなのである。

そこを埋めるように登場したのが湊かなえだった。この作家の特徴を一言で表現すれば、「ドロドロしている」。もはや品などに構っている暇はない。「あたしの怒りを、あたしの恨みを、全身を刺し貫く憎悪を晴らさでおくものか!!!」――そんな凶悪、醜悪な感情に満ちていて、それだけ観客の心の深奥に潜む根深いものに訴えかけてくる。本作を復讐譚ではないとする解説もあるが、あれだけ人の死ぬ話が復讐譚でなくてなんだというのかw
だから後味は悪いが、奇妙な爽快感があるのだ。池井戸作品はあくまで「悪を懲らしめる」だけだが、湊作品は「恨みを晴らす」。より徹底的でより奥深い。

4 キャスト等
湊かなえ作品にどっぷり浸かってしまうのも人間としていかがなものかと思うwが、本作は危険な原作に挑んで、新たなジャンル切り開いた作品と評価できるのではなかろうか。公開当時はさぞセンセーショナルだったと想像する。
キャストは、その後名を上げた橋本愛が目立つ。本作のコスチュームも格好いいのだが、微妙に似合っていないのが残念だ。能年玲奈、三吉彩花はちょっと登場シーンが分からなかった。芦田愛菜はこんなにガキなのに、こんなに上手いのかと、やはり驚くしかない。
松たか子は被害者かつ恨みを晴らす一種のターミネーターなのだが、無機質であると同時に、我と我が身を斬り苛みながら娘の恨みを晴らす悲嘆を垣間見せ、いい演技だと思う。

徒然草枕